第159話『しずかちゃんの決意~パート1』の巻

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ロドリゲス

rodriguez健康産業ラブカロリー株式会社の元オーナー。逮捕され拘置所生活を送る。サラの夫でゴンザレスの父。

サラ

saraロドリゲスの妻でゴンザレスの母。夫の浮気を常に心配しているが夫婦仲はよい。極度のダイエットオタク。

ゴンザレス

gonzalezロドリゲスとサラの息子。父にたくましく育てられるも、母の影響で女の子趣味に育つ。目下お受験準備中。

しずかちゃん

shizukaロドリゲス憧れの女性。長い黒髪と潤んだ瞳が印象的。出演映画のヒットでトップ女優に躍り出る。

潤子ちゃん

junkoバーバラの縁故でラブカロリー社に入社。元上司シェフチェンコに一途な思いを寄せ、彼の子を妊娠。

シェフチェンコ

shevchenko元経営戦略室部長。ロドリゲスの退任後、跡を継ぎ社長に就任。ロドリゲスの闇の姿を知る数少ない人物。

登場人物相関図はこちら


前回までのあらすじ

夫の浮気相手が彼の子を出産したショックで家を出たしずかちゃん。スイスの古城でひっそりと暮らす彼女のもとに、ある日、ロドリゲスの妻サラが訪れる。2人はしばしの語らいでお互いの傷を癒し合う。

古城の窓から外を見つめ、物思いにふけるしずかちゃん

Shizuka chan is musing while gazing outside from the old castle’s window.

バーバラ:

今日の3時のおやつは鎧塚俊彦のクープ・ミルティーユでございます。開店2時間前に並んでゲットしてきましたわ

奥さま…?どうされたのですか…?

Barbara:

Today’s three o’clock sweet is Toshihiko Yoroizuka’s coupe myrtille. I stood in line for two hours before the shop opened to make sure I got it.

Madam? You look… is something the matter?

しずかちゃん:

あ…バーバラさん…。サラさんはお帰りになったの?

いま、ちょうど彼女のことを考えてたの。彼女、とても純粋でかわいらしい方ね。1人の男性のことをあんな風に一途に愛せるなんてうらやましいわ

Shizuka chan:

Ah….Barbara san…. Has Sarah left?

I was just thinking about her now. She is such a pure-hearted and lovely woman, isn’t she? I do envy the way she devotes herself to loving a man with all her heart like she does.

バーバラ:

そうですね…。でも、終わった恋愛を引きずってたら、あっという間に10年たってしまったなんてこともあるので、時と場合によるかと…

Barbara:

Yes, right…. But if you just keep yourself tied to past love, one day you might realize that ten years have passed in a blink of an eye. So, there’s a time and a place, I guess.

しずかちゃん:

それに比べたら、わたしなんて…

Shizuka chan:

In contrast, I’m just…

バーバラ:

しずか奥さま、なにをおっしゃるんですか?

奥さまはアレックスさまのことを愛してらっしゃるではありませんか。はっ……も、もしかして、しずかちゃ、いえ、奥さま…あなたまだロドのことを…?

Barbara:

Madam Shizuka, what are you trying to say?

It’s obvious that you are truly in love with Mr. Alex. Ah…don’t.. don’t tell me…Shizuka cha…no, madam….you are still thinking about….Rod?

しずかちゃん:

女優を目指してアメリカにやってきたのが、今から12年前。生活費を稼ぐため、あなたのお店クラブバー薔薇で働いていたときロドに出会ったわ

ロドは初め、わたしのことを親不孝者だとか、英語がヘタくそだとか、日本でかわいいとモテはやされてたからって、アメリカで女優として成功するとは限らないとか、いじわるなことばっかり言ったわ

でも、そうやってわたしをいじめるときの彼の目は、反対にとっても優しかった

Shizuka chan:

It was 12 years ago when I came to the USA in the hope of becoming an actress. To make a living, I started working at Club Barbara, the club you owned. Then, I met Rod there for the first time.

At the beginning, he was so mean to me: he called me a bad daughter and said my English was hopelessly awful. He also once said just because a lot of boys fussed over me all the time in Japan, that didn’t mean I would have automatic success as an actress in America.

But the way he looked at me while he was teasing me, it was so tender in contrast to that.

バーバラ:

(しずかちゃん…あなたやっぱりまだロドのことを…)

Barbara:

(Shizuka chan….oh, so you’re still in love with Rod…)

しずかちゃん:

アメリカのことも、自分の将来のこともまるでわからなかったけど、不思議と、ロドといっしょにいるときは、不安も心細さもまったく感じなかった。とても居心地がよかった…

そんな彼のことを、わたしはすぐに好きになったわ。でも、彼には愛する妻・サラさんとかわいいゴンザレスちゃんがいた…

女優として仕事が舞い込むようになったころ、わたしはアレックスと出会った。そして彼にプロポーズされた。わたしはロドのことを忘れるために彼のプロポーズを受けた。そして、アレックスを愛し、暖かい家庭をつくろうとがんばった

でも、結局、彼の愛を得ることはできなかった…

女優の道も中途半端なら、ロドへの愛も、アレックスへの愛も中途半端…

Shizuka chan:

I didn’t know anything about America or what was going to happen to me in the future, but I never felt anxious or lonesome whenever I was with Rod. I felt as cozy as I was at home…

Soon I fell in love with him. But, he had a beloved wife, Sarah, and cute little Gonzalez….

When the actress job offers started coming along, I met Alex. Then, he proposed to me. In order to get rid of the feelings I had for Rod, I accepted his marriage proposal. And, I did my best to make a loving family with him.

However, after all, I failed to win his love….

I’m halfway not only to success as an actress, but also to love with Rod and love with Alex, too.

バーバラ:

しずかちゃん……

Barbara:

Shizuka chan…

muse:物思いにふける

gaze:じっと見る

pure-hearted: 心の純粋な

envy:うらやましがる

(例)Nancy envies her beautiful and intelligent sister.

(ナンシーは才色兼備の妹をうらやましく思っている)

devote:捧げる

(例)She devoted herself full-time to her business.

(彼女は自分の時間すべてを仕事にささげた)

past love:終わった恋

* ここでのpastは形容詞で「終わった、過ぎ去った」

in a blink of an eye: あっという間に

※今日のトリビア

in a blink of an eyeは直訳すると「瞬きをする間に」。

ここから「あっという間に」、「一瞬にして」という意味になります。

in contrast:対照的に、それにひきかえ

obvious:明らかに

in the hope of:~を期待して、~を望んで

(例)We came to the small town in the hope of finding a simpler way of life.

(私達はシンプルライフを目指し、この小さな街にやってきた)

make a living:生計を立てる

a bad daughter:親不孝者

* ここではdaughterなので親不孝な娘

awful:ひどい、最悪の

fuss over someone:(気に入られようとして)へつらう、媚を売る

automatic success:自動的に、自然に(ある状態に)なる

* 特に努力をしなくても「なりたい状態になる」という意味。本文では、「日本で男性にちやほやされてきたので、努力をしなくてもアメリカでも人気者になれる→女優になれる」

tease:からかう

lonesome:孤独な、さびしい

cozy:居心地のいい

* イギリス英語ではcosyとつづります。

(例)This restaurant is so warm and cozy, isn’t it?

(ここはほんわかした雰囲気の居心地のいいレストランだね)

beloved:最愛の、愛する

(例)beloved homeland(愛する祖国)

come alone:やってくる、入り込む

* 本文では仕事が舞い込む

get rid of:取り除く

win:(名声や信頼、愛などを)得る、勝ち取る

(例)He finally won her heart!

(ついに彼は彼女の心を射止めた!)

halfway:中途半端な、不完全な

次回予告

サラのロドリゲスに対する一途な愛に感化されたしずかちゃん。彼女は、自分のこれまでの人生を振り返り、そしてある決意をする。次回、乞うご期待!!

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 ジュミック今井(翻訳)

都内で英会話スクールを運営するかたわら、メルマガ『英語がぺらぺらになりたい!』を発行、英単語やフレーズを絵として覚える「イメトレ暗記」が好評を博している。アルファベットと音のルールを1冊にまとめた『フォニックス<発音>トレーニングBOOK』ほか、語学書も多数執筆。