第57話『シアター・オブ・ハート卒』の巻

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ロドリゲス

rodriguez健康産業ラブカロリー株式会社の元オーナー。逮捕され拘置所生活を送る。サラの夫でゴンザレスの父。

サラ

saraロドリゲスの妻でゴンザレスの母。夫の浮気を常に心配しているが夫婦仲はよい。極度のダイエットオタク。

ゴンザレス

gonzalezロドリゲスとサラの息子。父にたくましく育てられるも、母の影響で女の子趣味に育つ。目下お受験準備中。

しずかちゃん

shizukaロドリゲス憧れの女性。長い黒髪と潤んだ瞳が印象的。出演映画のヒットでトップ女優に躍り出る。

潤子ちゃん

junkoバーバラの縁故でラブカロリー社に入社。元上司シェフチェンコに一途な思いを寄せ、彼の子を妊娠。

シェフチェンコ

shevchenko元経営戦略室部長。ロドリゲスの退任後、跡を継ぎ社長に就任。ロドリゲスの闇の姿を知る数少ない人物。

登場人物相関図はこちら


前回までのあらすじ

ハイソな友達ガブリエルとベロニカの入れ知恵によって、ダンナの稼ぎから自分の財産をプールすることを知ったサラ。女とはかくも弱く、したたかな生き物なのか?そんなサラとは対象的に、ひとり自立して、成功の階段を登り始めたしずかちゃんは…!?

(来日し、ハイアットレジデンシーホテルのスイートルームで打ち合わせ中のマネー

ジャーとしずかちゃん)

(Manager and Shizuka chan, who came to Japan, having a meeting

in a suite at the Hyatt Residency)

マネージャー:

いいかい、しずか。世界でメジャーになるためには、この「ルパン3

世」をなにがなんでも日本でヒットさせなきゃいけない!!わかるね?

Manager:

Listen, Shizuka. In order to shoot to stardom world-wide,

this “Lupin The 3rd” must have blockbuster success in Japan,

no matter what!! You understand?

しずかちゃん:

ええ

Shizuka chan:

Yes.

マネージャー:

ところで、君のプロフィールだけど、身長165センチ、体重43キロ…ま

あ、これはおいといて…経歴にぱっとしたものがないんだよね。ここ

に書いてある「俳優養成学校」って、もしかして、120年の歴史を誇る

あの「シアター・オブ・ハート」のことかい?

Manager:

By the way, regarding your profile, height 165cm and weight

43kg….Well, let’s put them aside……

I think your background is sort of lackluster.

The “Actors’ Training Institution” written here…could that be

the legendary “Theater of Heart” with its 120-year history,

by any chance?

しずかちゃん:

いいえ、違うわ。あ、でも無料体験コースってのに参加したことはあ

るわ

Shizuka chan:

No, it’s not. Oh, but I did once take part in what they call

a free trial lesson.

マネージャー:

じゃあ、「シアター・オブ・ハート」卒ってことで

Manager:

OK, then, let’s just say that you graduated from

“Theater of Heart”.

しずかちゃん:

あのころは、電話帳だけが友達だったの…。英語を勉強しながら、俳

優養成学校に通って、毎日毎日、エージェントというエージェントに

かたっぱしから電話をかけて…。

受話器をガムテープで手にくくりつけて、電話をかけつづけた日もあっ

たわ。「ノルマとるまで、机の下からでてくるな!」なんて言われて、

電話をかけ続けたこともあった。うぅぅ…思い出すと泣けてきたわ

Shizuka chan:

In those days, a telephone directory was only my friend.

While studying English, I used to go to an actors’ training

institution and made phone calls to every last agent,

day after day….

Once I had to phone with my hand tied to the telephone receiver

with gummed tape. I even managed to keep phoning

while I was being told things like “Don’t come out from under

the desk until you achieve your quota!”

Oh….. I can’t help but cry when I recall these memories.

マネージャー:

ところで、きみの露出はテレビじゃなく、映画中心でおこなうことに

するよ

Manager:

By the way, we’re going to make you out as more a movie actress

than a TV actress.

しずかちゃん:

えぇ?テレビには出ないの?

Shizuka chan:

What? Not on TV?

マネージャー:

今後、テレビは高画質化するからね。君のそのにきび跡は、コンピュー

ターでの後修正がきく映画ならいざ知らず、ハイビジョンテレビだと

問題だろう

「ハイビジョンテレビに耐えられないセレブ・トップ10」に選ばれ

て、“ハイビジョン放送に不向きな顔”なんて太鼓判を押されたくな

いだろ?

Manager:

In time, TV will give higher quality pictures.

The acne on your face could be easily computer-airbrushed

for films and would look OK, but HDTV might be troublesome.

You wouldn’t want to be nominated in the “Top 10″ list of which

celebrities look worse in high-def” or be denounced as having

“An ill-suited face for high-def broadcasting”, would you?

suite: スイートルーム

* 日本語からの直訳で sweet room と勘違いしている人も多いようです。

正しくは suite とつづります。ただし発音はどちらも同じです。

shoot to stardom: 大スターになる、スターダムにのし上がる

blockbuster success: (映画などの)大ヒット、大当たり

put aside: ~はさておき

lackluster: ぱっとしない

(例)lackluster performance (ぱっとしない演技)

lackluster hair(さえない髪型)

legendary: 伝説的な

* 本文では、伝説に残るほど有名な、著名な学校というニュアンスで

使われています。

by any chance: ひょっとして

take part in: ~に参加をする

(例)I am going to take part in the speech contest.

(私はスピーチコンテストに参加するつもりです)

what they call: いわゆる

in those days: 当時

day after day: 毎日毎日、来る日も来る日も

tie: 結ぶ、くくる

achieve: 成し遂げる

quota: ノルマ

in time: やがて

acne: にきび

computer-airbrushed: コンピューターで画像修正する

troublesome: 面倒な、困難な

HDTV: ハイビジョンテレビ (= High Definition TeleVision)

denounced: 非難する、責め立てる

ill-suited: 不向きな、不似合いな

※今日のトリビア

接頭語ill-は、「悪い、まずく」などの意味。

ill-becoming (不似合いの)、ill-tempered (ふきげんな)など。

broadcasting: 放送

次回予告

プロフィールをこねくりまわして、女優しずかの虚像がつくられていく。純粋でウブな彼女は、この殺伐とした芸能界で生きていくことができるのか!?

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 ジュミック今井(翻訳)

都内で英会話スクールを運営するかたわら、メルマガ『英語がぺらぺらになりたい!』を発行、英単語やフレーズを絵として覚える「イメトレ暗記」が好評を博している。アルファベットと音のルールを1冊にまとめた『フォニックス<発音>トレーニングBOOK』ほか、語学書も多数執筆。