第154話『アレックスの生い立ち』の巻

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ロドリゲス

rodriguez健康産業ラブカロリー株式会社の元オーナー。逮捕され拘置所生活を送る。サラの夫でゴンザレスの父。

サラ

saraロドリゲスの妻でゴンザレスの母。夫の浮気を常に心配しているが夫婦仲はよい。極度のダイエットオタク。

ゴンザレス

gonzalezロドリゲスとサラの息子。父にたくましく育てられるも、母の影響で女の子趣味に育つ。目下お受験準備中。

しずかちゃん

shizukaロドリゲス憧れの女性。長い黒髪と潤んだ瞳が印象的。出演映画のヒットでトップ女優に躍り出る。

潤子ちゃん

junkoバーバラの縁故でラブカロリー社に入社。元上司シェフチェンコに一途な思いを寄せ、彼の子を妊娠。

シェフチェンコ

shevchenko元経営戦略室部長。ロドリゲスの退任後、跡を継ぎ社長に就任。ロドリゲスの闇の姿を知る数少ない人物。

登場人物相関図はこちら


前回までのあらすじ

アレックスが1週間ぶりに帰宅した。ところが、肺炎を患っていた彼は玄関先で倒れこむ。妻・しずかちゃんの献身的な看護で昏睡状態から目覚めた彼は、彼女の愛にはじめて気づき、そして涙する。

アレックス:

(オレは、なんて、なんてバカ野郎なんだ…。こんなにオレのことを大切に思ってくれる人は、この世のほかどこを探してもいやしないぞ…。それなのにオレは…オレは…うわああああああーーー!)

Alex:

(What a stupid guy I am…I could never find a woman like her anywhere else in the world who cares about me as much as she does…..and yet, I, I…. [He bursts into tears.] Ahhhhhhhhhhhhhhhh!)

しずかちゃん:

どうしたの、アレックス?急に泣き出したりして!!?

Shizuka chan:

What’s wrong, Alex? Why are you crying all of sudden!!?

アレックス:

しずかちゃん…。こんなぼくを許してくれ!!!

Alex:

Shizuka chan….I want you to forgive what I have been!!!

しずかちゃん:

え…!?

Shizuka chan:

What…!?

アレックス:

きみが、こんなにぼくのことを心配してくれてるっていうのに、ぼくは、ぼくは…この1週間、六本木のキャバクラに通いつめて、おねえちゃんが好きだというコーチの新作バッグなんかをプレゼントしていたんだ…

Alex:

You’ve been worrying about me so much but I…I was just paying frequent visits to Kyabakura in Roppongi night after night. I gave a bar hostess stuff she might like such as a brand new Coach purse.

しずかちゃん:

……(そんなところへ…スーツにマッチは入ってなかったけど)

Shizuka chan:

…(going to such a place…but there didn’t seem to be any packets of matches in his suit)

アレックス:

でも、聞いてくれ!しずかちゃん!!ぼくがここまでどうしようもないバカ野郎になったのは、ぼくの生い立ちのせいなんだ…

Alex:

But, I want you to listen, Shizuka chan!! The reason for my becoming such a stupid guy has something to do with how I was raised…

しずかちゃん:

生い立ち…?

Shizuka chan:

How you were raised…..?

アレックス:

ぼくは、小さいころから、オヤジに経営学と帝王学をたたきこまれて育った

小学5年のある日、オヤジはぼくに子会社の株をくれた。ぼくはそれを最高値で売り抜け、20万ドルの現金を手にしたんだ

中学1年の誕生日、オヤジはぼくに経営破たんした小さな会社をくれた。そして、こう言った。「リストラして、経営を立て直せ」。ぼくは13歳にして、40名の社員をクビにしたんだ…

「情は捨てろ!」「スリムボーン帝国の繁栄だけを考えるんだ!」。オヤジの口癖さ…

これまでの人生、すべてこんな調子だよ。人に情けをかけたこともなければ、人を愛したこともない。実のところ、愛がどんなものかすら、ぼくにはわからないんだよ…

Alex:

My father has hammered the theory of business administration and elitism into me since I was a kid.

One day when I was in the fifth grade, my father gave me some stocks of one of his subsidiary companies. I sold off them at the highest price and had 200,000 dollars in my hands.

On my birthday in the seventh grade, my father gave me a small company which had fallen into bankruptcy and said to me. “Reduce redundant personnel and reshape the business management”. At the age of 13, I fired 40 employees who worked there…..

“Never show anyone sympathy!” or “Think only how to make the Slimborn Empire prosper!”. these are my father’s favorite phrases, you know…

My whole life has been just like this all the time. I’ve never been shown compassion or loved anyone. To be honest, I don’t even have the slightest idea what love is…

しずかちゃん:

かわいそうなアレックス…

Shizuka chan:

Oh, poor, Alex….

pay frequent visits:通い詰める

* frequentは「頻繁に、再三にわたる」の意

purse:バッグ

※今日のトリビア

もちろんbagということも可能ですが、purseはとりわけ女性用のかばんを指して使われる米語です。なお、イギリスではhandbagと言います。また、「お財布」はイギリス英語でpurse、米語ではwallet。

(例)She opened her purse and took out her wallet.(米)

She opened her handbag and took out her purse.(英)

彼女はバッグをあけて、お財布を取り出した)

a packet of:~ひと箱

raise:(子供を)育てる

hammer something into someone:~を(人)に叩き込む

(例)The team manager hammered his message into the players.

(チームマネージャーは選手たちに彼の信条を叩き込んだ)

elitism:精鋭主義、帝王学

* 文字通り、エリート主義(意識)というニュアンスを包括する表現。

subsidiary company:子会社

sell off:売り切る、売り払う

fall into bankruptcy:倒産する、経営が破たんする

redundant:余剰な、重複する

(例)the removal of redundant information

(重複情報を削除する)

personnel:職員、人員

reshape:再建する、形を整える

(例)reshape the economy (経済を再建する)

fire:クビにする (=dismiss)

sympathy:同情心、情け

prosper:繁栄する

(例)His IT business has been prospering.

(彼のITビジネスは成功を収めている)

次回予告

とっかえひっかえ女性と浮気しては、無慈悲に社員をクビにしてきたアレックス。しかし、彼にはスリムボーンコンツェルンの御曹司としてのつらく悲しい過去があった。次回、再びアレックスとの幸せな生活を送り始めたしずかちゃんに、ショッキングなニュースが飛び込んでくる。乞うご期待!!

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 ジュミック今井(翻訳)

都内で英会話スクールを運営するかたわら、メルマガ『英語がぺらぺらになりたい!』を発行、英単語やフレーズを絵として覚える「イメトレ暗記」が好評を博している。アルファベットと音のルールを1冊にまとめた『フォニックス<発音>トレーニングBOOK』ほか、語学書も多数執筆。