第114話『モナコからロドリゲスを思う』の巻

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ロドリゲス

rodriguez健康産業ラブカロリー株式会社の元オーナー。逮捕され拘置所生活を送る。サラの夫でゴンザレスの父。

サラ

saraロドリゲスの妻でゴンザレスの母。夫の浮気を常に心配しているが夫婦仲はよい。極度のダイエットオタク。

ゴンザレス

gonzalezロドリゲスとサラの息子。父にたくましく育てられるも、母の影響で女の子趣味に育つ。目下お受験準備中。

しずかちゃん

shizukaロドリゲス憧れの女性。長い黒髪と潤んだ瞳が印象的。出演映画のヒットでトップ女優に躍り出る。

潤子ちゃん

junkoバーバラの縁故でラブカロリー社に入社。元上司シェフチェンコに一途な思いを寄せ、彼の子を妊娠。

シェフチェンコ

shevchenko元経営戦略室部長。ロドリゲスの退任後、跡を継ぎ社長に就任。ロドリゲスの闇の姿を知る数少ない人物。

登場人物相関図はこちら


前回までのあらすじ

ロドリゲスはじめ重役たちが逮捕されるなか、次期社長に就任することとなったシェフチェンコ。ある日、シェフチェンコのもとにかつての部下・潤子ちゃんが現れ、彼の子を身ごもったと告げる。日本で娘のできちゃった婚に激怒する潤子ちゃんの父。おなじころ、拘置所生活のロドリゲスをおいて、御曹司と結婚してしまったしずかちゃんは、モナコで甘い新婚生活を送っていた。

モナコ停泊中のクルーザー『レディーしずか号』船内。

ひとり物思いにふけながら、朝食をとっているしずかちゃん

On the ship, “Lady Shizuka”, which is moored in Monaco.

Shizuka chan is musing while having breakfast.

しずかちゃん:

ロドは今もまだ拘置所で暮らしているのかしら…

大好きな「まるごとバナナ」も思うように食べられなくて、

ガリガリにやせほそってるんじゃ…かわいそうなロド…

Shizuka:

I wonder whether Rod is still being held in jail…..

He has no chance to eat his favorite “Marugoto banana”,

so he might get as skinny as a rail…..oh, poor Rod.

なにげなく、そばにあったゴシップ誌を拾い上げる

She idly picks up a gossip magazine nearby.

しずかちゃん:

え…!?

『ついに夫人とひとり息子にも愛想をつかされたか!?

哀れ!!拘置所生活のロドリゲス氏』――

これ…いったいどういうこと…!?

『ロドリゲス氏が住む超高級マンションの住人が語った話に

よると、ここ数ヶ月、夫人の姿もお子さんの姿もまったく

見かけていないという――』

そんな…奥さんがロドを見捨てるなんて…まさかそんなこと…

でも…もしこれが本当なら…ロドはいまひとりってこと…?

ということは…わたしがロドのそばにいてあげることもでき…

Shizuka:

What..!?

“At last, even his wife and his only son have had enough of

him!? How miserable!!! Mr.Rodriguez living in jail -”

What does that mean…!?

“According to one of the other tenants living in the luxury

condominium that Mr. Rodriguez calls home,

Mrs. Rodriguez and their son haven’t been seen around at all

for the last few months-”

No…Rod’s wife left him? it couldn’t be possible…

But…if the information is true, it means Rod is alone…?

That means…I could be there for him….

突然、首を激しく横に振るしずかちゃん

Suddenly…Shizuka chan shakes her head violently.

しずかちゃん:

ばか!ばか!わたしったらなにを考えてるの!!

ロドのことは、アレックスのプロポーズを承諾したときに完全

にふっきったはずでしょ。これからは彼とふたり幸せな家庭を

つくろうって、そう心に誓ったはずよ…

Shizuka:

No, no, how stupid of me!! What am I thinking?

Didn’t I decide to forget about Rod after accepting Alex’s

marriage proposal? From then on, I vowed to myself to make

a happy family with him. That’s what I swore within myself.

ウィーン 垂直離着陸機シーハリアーが甲板におり立つ音。アレックスが戻る

Whirring sound of the VTOL SEA HARRIER landing on the deck. Alex is back.

アレックス:

しずかちゃん、ただいま!!いま帰ったよ!!

んん…?どうしたんだい!?頬が濡れてるじゃないか!?

Alex:

I’m home, Shizuka. I’m back!!

Ahh?? What’s wrong with you!? Your cheeks are wet with tears.

しずかちゃん:

な、なんでもないの…(涙をぬぐう)

Shizuka:

No, nothing….(wiping off the tears)

アレックス:

そうか、長いあいだ留守にしてたから、ずいぶんと寂しい思い

をさせてしまったね。もう二度と、きみをひとりにはしないよ

Alex:

I see. I’ve been away for a long time,

so I made you feel extremely lonely.

I’m sorry. I’ll never ever leave you alone again.

moor: (船舶が)停泊する

muse: 物思いにふける

(例)I was musing over the past memories.

(私は過去の思い出にふけっていた)

in jail: 拘置されて、獄中に入って

as skinny as a rail: やせ細って、ガリガリやせた

poor: 可愛そうな

* 「貧乏な」のほかに、このような意味もあります

idly: ぼんやりと、無為に

(例)We sat chatting idly. (私達は座ってだらだらと話をした)

gossip magazine: ゴシップ誌

nearby: そばに、近くに

(例)Is there a parking lot nearby? (この近くに駐車場はありますか)

have enough of someone: ~にうんざりである

miserable: 惨めな、哀れな

tenant: (貸しビルやアパートなどの)入居者、テナント

condominium: 分譲マンション

* 賃貸マンションはapartment。なお、mansionは「館、大豪邸」という意味。

本文の the luxury condominium that Mr Rodriguez calls home は

ロドリゲスが住む(直訳すると、そこを家と呼ぶ)超高級マンション

violently: 激しく

marriage proposal: 結婚の申し込み

from then on: その時から

vow: 心に決める

(例)Jack vowed to give up smoking.

(ジャックは絶対に禁煙をすると誓った)

swear: 誓う

within myself: 心の中で

whir: (機械やエンジンなどが)ブーンブーンという音を立てる

I’m home: ただいま

※今日のトリビア

直訳すると「私は家にいます」。いわゆる日本語のただいまと同じ

表現は英語にはありませんが、これは最も近い言い回しのひとつ

wipe off: ぬぐう

(例)wipe off the table (テーブルを拭く)

extremely: 極めて、非常に

次回予告

はるか遠くモナコの地で、ロドリゲスへの思いを断ち切ろうとするしずかちゃん。彼女に惜しみなく愛を注ぐ夫アレックス・ボーン。次回、舞台はイタリアシチリア島。漁師町でひっそりと身を隠し生活するサラとゴンザレスは…。

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 ジュミック今井(翻訳)

都内で英会話スクールを運営するかたわら、メルマガ『英語がぺらぺらになりたい!』を発行、英単語やフレーズを絵として覚える「イメトレ暗記」が好評を博している。アルファベットと音のルールを1冊にまとめた『フォニックス<発音>トレーニングBOOK』ほか、語学書も多数執筆。