今週の TED ビデオ:The Future of Nuclear Power「未来の原子力発電」

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今週の TED ビデオ:The Future of Nuclear Power「未来の原子力発電」

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Getting Rid of Nuclear Waste

原子力発電の問題点は、大きく分けて(1)技術的な問題と(2)人間的な問題とがあります。ひとたび炉心溶融が始まってしまうと手が付けられなくなる、使用済み核燃料が大量に発生する、などが(1)の問題で、規制機関と電力会社の癒着、経済性と安全性のどちらを優先にするかが難しい、などが(2)の問題です。

この TED ビデオは、主に(1)の問題を解決するために MIT で研究されている新型の溶解塩原子炉(Molten Salt Reactor)に関するものです。プレゼンとしてはあまり上手ではありませんが、興味深いトピックなので紹介します。

現在実用化されている原子炉は、すべて水を減速・冷却剤に使う軽水炉です。その性格上、軽水炉では燃料が持つエネルギーのうち3%しか活用できず、残りのエネルギーを10万年もの間放射し続ける危険な放射性廃棄物を生み出してしまいます。その上、万が一運転中に外部電源を喪失してしまうと、福島第一の事故のように炉心溶融を起こして環境に放射性物質をまき散らしてしまいます。

発表者によると、彼らが作っている溶解塩原子炉を使えば、燃料から大半のエネルギーを取り出すことが出来るので、放射性廃棄物の量ははるかに少なくて安全だそうです。その上、現在世界中に行きどころがなくなって蓄積されている軽水炉から出て来た使用済み核燃料を燃料として使うことも出来るので、「核のゴミ」の問題も同時に解決できます。

それに加え、溶解塩原子炉は外部電源を喪失しても安全に停止するだけなので、福島第一で起こったような事故は回避できる、という性質を持っている、という話です。

溶解塩原子炉の方が安全性が高いことは理解できますが、どこまで実用化に近づいているかなどの技術的な詳細が、このビデオでは全く説明されてない点が少々不満なビデオです。スピーカーの2人が設立した会社のホームページ(Transatomic Power)にもそのあたりの詳細は全く記述されていません。

この溶解塩原子炉に関しては、Discovery.comが「Nuclear Plant Powered by Spent Fuel」という記事で解説を加えていますが、同じく詳細が公開されてない点を指摘しています。

中島聡中島聡
ブロガー/起業家/ソフトウェア・エンジニア、工学修士(早稲田大学)/MBA(ワシントン大学)。 NTT通信研究所/マイクロソフト日本法人/マイクロソフト本社勤務後、ソフトウェアベンチャーUIEvolution Inc.を米国シアトルで起業。現在は neu.Pen LLCでiPhone/iPadアプリの開発。
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