よい良い未来のカギは知識資本投資?!
第114回:よい良い未来のカギは知識資本投資?!
(1)今週発表された『日本の未来の預言書』
本当に、本当に不思議なもので、ほとんど日本国内ではニュースになってないけれど、先週金曜日(2014年11月14日)、日本の未来を考えるために、重要な発表が行われた。
日本政府が、今後の経済財政に関する重要政策を作っていくうえで、参考にするために設置している経済財政諮問会議(議長・安倍晋三首相)の下に設置したとある専門調査会の最終報告が発表されたのである。
その名も、
「選択する未来」委員会
だ。
その名の通り、日本の未来を選択するための委員会。
「選択する未来」委員会本体のもと、
◆成長・発展
◆人の活躍
◆地域の未来
の3つのワーキング・グループが存在し、民間企業や団体、教育研究機関、元政府官僚などから、その道のプロとされる専門家の方々が、それぞれ10名ほど集められ、今年1月、設置された。
例えば、成長・発展ワーキング・グループのメンバーには、以下の面々が名を連ねている。
*****【成長・発展WGメンバー名簿】******
・岩田 一政 (公益社団法人日本経済研究 センター理事長 元日本銀行副総裁)
・石倉 洋子 (一橋大学名誉教授)
・石黒 不二代 (ネットイヤーグループ 株式会社代表取締役社長)
・佐藤 可士和 (クリエイティブディレクター)
・白木 夏子 (株式会社 HASUNA 代表取締役)
・鈴木 準 (株式会社大和総研主席研究員)
・高橋 智隆 (株式会社ロボ・ガレージ代表 取締役)
・戸堂 康之 (早稲田大学政治経済学術院 経済学研究科教授)
・藤山 知彦 (三菱商事株式会社常勤顧問)
****************************************
このように元日本銀行副総裁や、大学教授や、民間企業の研究員とか社長が集まって、約1年間もかけ、日本の未来を見据えて、持続的な成長・発展のための
「課題とその克服に向けた対応策」
を検討してきたのだ。
そして、先週14日、その第13回目!!!の会合が開催されて、ついに最終報告がとりまとめられたというのである。
ちなみに、経済財政諮問会議は、2001年1月の中央省庁再編で新設された比較的新しい政府の組織ではあるが、現在の安倍政権が打ち出し、世界的なニュースにもなっている「アベノミクス」関連の一連の政策も、もともとこうした委員会で形作られてたものだ。
どうやら、その存在感や影響力は、年々、大きくなっているようで、皆さんご存知の通り、日銀まで、こうした委員会の提言を反映し、デフレ脱却のための大規模な金融緩和を行うようになった。
本来であれば政府の直接的なコントロールが及ばないはずの日銀が、である。
そういう意味では、こうした委員会の最終発表は、
『日本の未来の預言書』
みたいなもの、と考えても良いくらいなのかもしれない。
おまけに今回の委員会は、その名もずばり、
「選択する未来」委員会
である。
その最終報告書は、まさに、
『日本の未来の預言書』。
仮に、今後の政府の政策をまったく無視したとしても、日本人なら、知っておくべきもの、あるいは、知らないと損じゃないだろうか?
さらに、この委員会には、もう1つ特筆すべき点がある。
「人の活躍」ワーキング・グループ に参加されていた工藤啓(NPO法人育て上げネット理事長)さんが、ご自身のブログに、以下のような報告を書いている。
『最終日にそれぞれがこのワーキング・グループについての振り返りや感想を述べた後、自然発生的に拍手が生まれた。
これまで審議会や委員会に出させていただいたことはあるが、初めての経験だった。
開始当初から西村副大臣、小泉政務官(注:小泉進次郎さんのこと)が忌憚のない意見、自由な提案を出す場であることを一貫して強調されていたことが、闊達に言葉が飛び交う雰囲気を作ったのかもしれない』
〔ご参考〕
●「ニート」という言葉が外れました。
実際に参加していた委員の方が、
『これまで審議会や委員会に出させていただいたことはあるが、初めての経験だった』
などとブログに書くくらいだから、よほど中身のある議論が行われてきたのだろう。
まぁ、何てったってテーマが、「日本の未来の選択」だから、そりゃ、みんな真剣になって当然って言えば、それはそうかもしれないけど。
そんな最終報告書の内容も、なぜか日本のマスコミ報道の手にかかると、
『報告書では、9割の若者が結婚し、2人超の子供を育てる状況が実現すれば、50年後の人口は1億人程度となり、その後の人口減少は収まると推計。今世紀中に人口減少を収束させ、50年後も実質GDP成長率1.5-2%を維持するとの目標を提示した。
また、こうした未来を実現するため、2020年までに少子化対策を倍増し、2020年代初めまでに、0歳から14歳までの年少人口の減少を止める、など当面の取り組みを明示。
2020年までに少子化対策と生産性の向上、地方創生を一体的に推進し、停滞・守りの姿勢を改革・変革するとした』
〔ご参考〕
● 50年後に人口1億人、成長率1.5-2%
といった感じで、まったく味気のないというか、何の役にも参考にもならない内容で報じられてしまう。
いや、報じているだけマシなくらいで、大多数のマスコミはスルー。
なんで???
不思議でしょうがない。
日本のマスコミには、よっぽど頭がよろしくない人々が集まっているのだろうか?
とにかく、この最終報告書の中には、当然のことながら、グローバル化に関する内容も、今後、日本が成長や発展を維持していくため…というか、もはや生き残るために、絶対に避けられないものとして含まれている。
このメルマガや、うちのブログ上で書いてきたことと関連する内容も、かなり多い(驚くほど多い)ので、今回は、この「選択する未来」委員会の最終報告書の中から、その辺りの内容をご紹介してみよう。
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(2)基本的な考え方と共通の課題を見て気づいたこと
この「選択する未来」委員会の様々な報告書や討議資料は、過去の会合も含め、すべて内閣府の公式サイト上で公開されているので、お時間がある方は、全部目を通しておいても良いかもしれない。
〔ご参考〕
●「選択する未来」委員会
● 第13回会議資料
でも、まぁ、皆さん、そんなにお時間ないだろうし、お時間があったとしても、重要なポイントを先に知っておきたいだろう。
そこで、まず、見ておくと良いと思われるのが、平成26年3月付で内閣府から出されたと思われる
『「選択する未来」委員会について』
という資料。
なぜかこの資料、Googleどころか内閣府の公式サイト上で検索かけても出てこなくて、民主党の蓮舫議員のサイト内のもの(PDF形式)しかないみたいなのだけど、その2~3頁目に、「選択する未来」委員会がどのような認識に基づいて、何を検討するかが、リストアップされている。
例えば、冒頭から、
『人口減少・高齢化は、経済の縮小、国力の低下をもたらすという見方に対し、「未来は政策努力や人々の意志によって変えられる」という認識に立って、常識にとらわれず大胆な選択肢を検討する。』
などと明記され、続いて、この委員会の基本的な考え方と各ワーキング・グループ共通の課題が、以下のように掲げられている。
*****【基本的な考え方と共通の課題】*****
(1)人口減少と高齢化
◆今後少なくても50年は人口減少と高齢化が続くことを考えると、それを前提としたシステムに日本の経済社会を変える必要がある。その際、対処すべき優先課題は何か。
◆人口減少の問題点は何か。出生率を上げるため、国、地方自治体、企業、社会は何をすべきか。
(2)世界経済の構造変化
◆グローバル化、新興国の成長等、世界経済の構造が大きく変化するなかで、日本はどう生き抜き、どのような役割を果たしていくのか。資本主義のありようは、どうなっていくのか。
(3)未来のための攻めと守りの戦略
◆地方のあり方、財政や社会保障制度の持続可能性を考えると、縮小・撤退を含め大胆な改革が必要ではないか。その際、成長の確保、人材の育成、地域発展のため、どこに防衛線を引き、攻めに転じていくのか。
(4)目指すべき日本の未来の「選択」
◆以上を踏まえ、日本の未来はどのような姿を目指すべきか。
◆日本流の公共心、「おもてなしの心」等日本のソーシャル・キャピタルをどう活かすか。
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2月24日に開催された第3回目の会合で話し合った内容をもとに作ったものらしいが、要するに、これをベースに議論を進め、11月14日の最終報告になっている、というワケ。
で、すでにこの課題設定の時点で、いくつか気づいたことがあるので、まずは各項目について、それぞれ指摘しておこう。
(1)人口減少と高齢化
机上の空論より実例を参考にすべき。
米国では2007年に史上最多の数の赤ちゃんが生まれ、ベビー・ブームが起こった。
何やかんやと子育て支援が充実したヨーロッパの国々じゃなく、日本よりずっと女性の社会進出が進んだ米国で…だ。
それがリーマンショック後の不況からの回復や、株価が史上最高値を更新し続ける現在の米国の景気にも少なからず影響を与えている。
でも、なんで米国ベビー・ブームが起こったのかどころか、その事実すら議論されてないっぽい。なんで?
〔ご参考〕
● アメリカではここ数年ベビー・ブームが起こってるんですよ
(2)世界経済の構造変化
「日本はどう生き抜き・・・」など課題が漠然とし過ぎ。
ただし、これは後に中間整理の際にまとめられた『未来への選択 概要』(PDF形式)の資料内にある改革・変革の方向性に関する箇所で、
『2.中長期的な経済成長と発展:経済を世界に開き、「創意工夫による新たな価値の創造」により、成長し続ける』
の中に含められ、その他の案とともに
***【オープンな国づくり】****************
サービス業や中堅、中小企業等の外へのグローバル化と、対日投資促進等の内なるグローバル化の同時進行。
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と明記されることになった。
これからのグローバル化は、日本から海外へ出て行くことだけじゃなく、海外から日本へ呼び込むことについて、はっきり明記したのだ。
対日投資だけじゃなくて、世界中から観光客やビジネス客を呼び込むことも日本国内経済へのインパクトは大きいってのもあわせて考えれば、その次の地域のあり方や地方再生にも当然つながってくる。
〔ご参考〕
• 2013年、NYを訪れた観光客は史上最多の5,430万人、経済効果は590億ドル(約6兆円)!!!
~今後、日本国内でのグローバル化が重要になると指摘した記事。
(3)未来のための攻めと守りの戦略
これも漠然とし過ぎていて何も言ってないのと同じ。
でも、これも先ほどと同じく、中間整理の際の『未来への選択 概要』(PDF形式)の資料内の、
『4.地域の未来:個性を活かした地域戦略と集約・活性化 』
の中で、その他の対策案とともに、
***【「新しい絆」による地域づくり】****
NPO やソーシャルビジネス等の「新しい絆」を活かした地域づくりを推進。
****************************************
などと記されている。
これも机上の空論より実例を参考にすべき。
つまり、近年のニューヨークのあらゆる分野で展開されている無数の社会貢献活動の事例を参考にしたらいい。
これは、先ほど触れなかったが、『資本主義のありよう』にも大きく関わってくる。
社会貢献関連の話題については、過去にこのメルマガやブログ上でもめちゃめちゃ沢山事例を書いているけど、取りあえず、以下ご参考。
〔ご参考〕
● Giving Pledge 世界屈指の大富豪が慈善事業への寄付活動を普及へ
● 常にゲームに勝つのは、より多くの人々が幸せになる道を選ぶ人 Cities of Service
(4)目指すべき日本の未来の「選択」
これも漠然とし過ぎ。
しかも、これは最終報告まで「おもてなしの心」等日本のソーシャル・キャピタルで終わってしまっている。
視点はよいのに、もったいない。
これに関しては、多様な文化や価値観を持つ社会で実際に生活している日本人の意見を絶対に聞くべき。
「おもてなしの心」より、他人であっても「信頼」して任せることができることや、その「信頼」に応えるべく、最大限の努力ができることが、日本人の持つソーシャル・キャピタルの根幹。
それを誰も分かってないっぽい。
〔ご参考〕
● 実は、知的な賢者ほど他人を信頼する?!
…とまぁ、以上、「選択する未来」委員会の最終報告のお話に入る前に、初期の段階で設定されていた
『基本的な考え方と共通の課題』
を見て気づいたことをつらつらと書いてみた。
たぶん、皆さん、既にお気づきの通り、実は、日本のより良い未来を考えるために、ニューヨークで実際に起こっている現象や実例は、極めて有益な参考になりえるのである。