映画『ロスト・イン・トランスレーション』からの出題
ロマンティック・コメディ/ヒューマン・ドラマ2003年/アメリカソフィア・コッポラ(Sofia Coppola)ビル・マーレイ(Bill Murray)、スカーレット・ヨハンソン(Scarlett Johansson) ほか
CM撮影で来日したボブは、中年の落ち目ハリウッド俳優。東京のホテルに滞在中、手厚くもてなされるが、遠い異国の地にいることを実感し、孤独と不安におそわれる。一方、同じホテルに宿泊している若妻のシャーロットは、新婚にもかかわらず、フォトグラファーで多忙な夫に毎日放っておかれる日々。そんな年齢の離れたふたりは、何度か顔を合わせるうち、お互いの疎外感に共感し、徐々に心を癒しあうようになる。
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(1)本来の意味が、翻訳中に失われて
(2)翻訳できずに困りはてて-
まず、ツタ哉くんの言うとおり「lost」だけでは何を「失った」のかわかりませんね。また、「lost」には「迷った」という意味もあります。本作品では、この2種類の意味を掛けているようですので、それぞれ検証してみましょう!
(1)「失われた」説
主人公ボブが話す英語を、彼の通訳者が半分ぐらいしか通訳しないため、言いたいことが伝わらないという場面があります。
コミカルに誇張されていますが、いくら上手な通訳・翻訳者でも、元の言語のメッセージを翻訳言語で100%再現することはほぼ不可能だと言われています。そのため、言いたかったことの一部が翻訳過程で失われた状態を「lost in translation」と表現することがあります。
(2)「迷った」説
人が「lost」の状態なら、「失われた(=行方不明の)」以外に、道に「迷った」り、さらには「困った」状態になります。
また、「translation」は単に言語間の翻訳だけでなく、日米間の文化の違いや夫婦間の気持ちのすれ違いをうまく乗り越えるための翻訳=コミュニケーションとも解釈できます。その翻訳が思いどおりにいかない主人公たちの当惑しきった様子を「They are lost in translation.」と表現できます。
- 2種類の「lost」を日常でつかってみよう!
- 海外旅行中に困ったことになりました。
A:Can I help you?
B:Oh, thank you. I think I’ve lost my map somewhere around here.
A:Then I’ll give you mine. Is there anything else I can help you with?
B:Um, could you tell me where we are now? I think I’m lost.A:どうかしましたか?
B:あ、すみません。ここらへんで地図をなくしたみたいなんです。
A:それなら私のをあげましょう。他に何かお役に立てますか?
B:えーと、ここがどこだか教えてもえらますか?道に迷ったようです。
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ふくみっつぁんのプロフィール
1971年、兵庫県生まれ。特許翻訳者。 英語講師、日本語学校の海外営業、霞ヶ関の特許翻訳専門会社勤務を経て、現職。 メルマガ『日刊タイトル英語』を発行、 ホームページ『タイトル英語』を運営。 英語のおもしろさを読者と分かちあう。英検1級。TOEIC955点。 たまにシンガーソングライター&イラストレーター。
著書『翻訳者はウソをつく!』(青春出版社)好評発売中!
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