第64話『こんにちは、あかちゃん♪』の巻

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ロドリゲス

rodriguez健康産業ラブカロリー株式会社の元オーナー。逮捕され拘置所生活を送る。サラの夫でゴンザレスの父。

サラ

saraロドリゲスの妻でゴンザレスの母。夫の浮気を常に心配しているが夫婦仲はよい。極度のダイエットオタク。

ゴンザレス

gonzalezロドリゲスとサラの息子。父にたくましく育てられるも、母の影響で女の子趣味に育つ。目下お受験準備中。

しずかちゃん

shizukaロドリゲス憧れの女性。長い黒髪と潤んだ瞳が印象的。出演映画のヒットでトップ女優に躍り出る。

潤子ちゃん

junkoバーバラの縁故でラブカロリー社に入社。元上司シェフチェンコに一途な思いを寄せ、彼の子を妊娠。

シェフチェンコ

shevchenko元経営戦略室部長。ロドリゲスの退任後、跡を継ぎ社長に就任。ロドリゲスの闇の姿を知る数少ない人物。

登場人物相関図はこちら


前回までのあらすじ

育ての親・よねすけの危篤を知り、急遽、実家の奈良へ向かったしずかちゃん。病床の彼から、生みの親である常盤由紀のこと、彼女と姑、小姑の間に繰り広げられた戦いの顛末を聞く。ある日、こつぜんと姿を消した由紀。彼女のたどった人生がいま明らかに!!

(しずかちゃんに、彼女の母について語るよねすけ)

(Yonesuke, talking to Shizuka chan about her mother)

よねすけ:

はたから見ていると、いたって幸福そうな家族やったのやけど、お母

さんは耐えられたなかったんやろな…。ある夏の夕方、彼女はこつぜ

んと姿を消してしまった。鍋を片手に、豆腐を買いにいってくると言

い残して――

Yonesuke:

They appeared to be a normal happy family, indeed,

but Yuki san couldn’t bear it….I think.

One summer evening, she disappeared suddenly without trace.

Holding a pan in her hand, her leaving words were,

“I’ll go and get a block of tofu……”

しずかちゃん:

えぇ!?それで、それでお母さんは??

Shizuka chan:

Uh-ha!? Then, what happened to my mother??

よねすけ:

残念ながら、豆腐を買いに行ったわけではなかったんやなぁ。その後、

何日たっても帰ってこえへんもんやから、家族はそりゃ心配してな、

彼女の実家や、彼女がよく日帰りで行っていた三重県の榊原温泉も探

しまわったんや。しかし、彼女はどこにもおらんかった。

知っとるか?榊原温泉に行くと、ミロのビーナスに会えるんや。なに

もわざわざパリに行くこたぁないんや

Yonesuke:

I regret to say that she hadn’t gone away just to buy some tofu.

After that, the family worried about her so much, since she

hadn’t come home no matter how long they waited for her.

For the purpose of finding her, they went to her parents’ home

and Sakakibara Onsen in Mie Prefecture where she often took day

trips. But no one could locate her after even all that.

You know what? In Sakakibara Onsen, you can see Venus de Milo.

You don’t need to bother going all the way to Paris.

しずかちゃん:

で、わたしはいったいいつ登場するのよ!?

Shizuka chan:

Then, when am I supposed to appear in the story?

よねすけ:

それから数年たったある日、わしのもとに、彼女がひょっこりと現れ

たんや。手には、それはそれはかわいい赤ちゃんを抱いてな。その子

が何を隠そうおまえや。今でもそのときの光景は忘れへん。日本人と

は思えへん透き通るように色の白いおさるさんやった

Yonesuke:

A few years after the incident, she dropped in on me one day,

holding such a lovely cute baby in her arms.

The baby was you, as a matter of fact.

I still can’t forget the sight of it even now.

The baby was like a small monkey with incredibly transparent

clear skin, so you could barely imagine that she was Japanese.

しずかちゃん:

お母さんはなんて言ったの?元気そうだった??

Shizuka chan:

What did my mother say to you? She seemed fine??

よねすけ:

彼女はわしにこう言った。「よねすけさん、この子を私の代わりに育

ててくれませんか?」。彼女の身になにかのっぴきならない事態が発

生したことを、わしは察知したんや

Yonesuke:

She told me, “Yonesuke san, would you please raise this baby

instead of me?”. I soon realized that she might have been

driven into some hopelessly difficult situations.

regret to say: 残念ながら

(例)I regret to say that I can’t help you this weekend.

(残念ながら、今週末はお手伝いができません)

for the purpose of: ~の目的で、~のために

a day trip: 日帰り旅行

bother: わざわざ~する

all the way: (遠路)はるばる

appear: 現れる、登場する

incident: 出来事

drop in on someone: ひょっこり訪ねる、立ち寄る

(例)Please drop in on us when you happen to come this way.

(こちらへお出での節は、どうぞお立ち寄り下さい)

as a matter of fact: 実際のところ、何を隠そう

sight: 光景

even now: 今でも

transparent: 透き通った

※今日のトリビア
本来は透き通ったの意味ですが、transparent lie(見え透いた嘘)のように、比喩的に使うこともあります。

barely: ほとんど~ない

(例)As his voice was so low, we could barely hear him.

(声がとても小さかったので、彼が何を言っているかほとんど聞こえなかった)

raise: 育てる

be driven into~: に追い込まれる(苦境やトラブルなど)

instead of~: のかわりに

(例)Could I have some coffee, instead of tea?

(紅茶のかわりにコーヒーをいただけますか)

hopelessly: 救いようのない、どうしようもない

次回予告

姑と小姑に我慢できず、ひとり家を出たしずかちゃんの母は、数年後、娘を連れて帰ってきた。しかし、彼女は娘のもとにとどまることなく、奈良をあとにする。だれも知らない空白の年月――彼女の身に一体なにが起こったというのか!?

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 ジュミック今井(翻訳)

都内で英会話スクールを運営するかたわら、メルマガ『英語がぺらぺらになりたい!』を発行、英単語やフレーズを絵として覚える「イメトレ暗記」が好評を博している。アルファベットと音のルールを1冊にまとめた『フォニックス<発音>トレーニングBOOK』ほか、語学書も多数執筆。