第61話『しずかちゃんの生い立ち』の巻

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ロドリゲス

rodriguez健康産業ラブカロリー株式会社の元オーナー。逮捕され拘置所生活を送る。サラの夫でゴンザレスの父。

サラ

saraロドリゲスの妻でゴンザレスの母。夫の浮気を常に心配しているが夫婦仲はよい。極度のダイエットオタク。

ゴンザレス

gonzalezロドリゲスとサラの息子。父にたくましく育てられるも、母の影響で女の子趣味に育つ。目下お受験準備中。

しずかちゃん

shizukaロドリゲス憧れの女性。長い黒髪と潤んだ瞳が印象的。出演映画のヒットでトップ女優に躍り出る。

潤子ちゃん

junkoバーバラの縁故でラブカロリー社に入社。元上司シェフチェンコに一途な思いを寄せ、彼の子を妊娠。

シェフチェンコ

shevchenko元経営戦略室部長。ロドリゲスの退任後、跡を継ぎ社長に就任。ロドリゲスの闇の姿を知る数少ない人物。

登場人物相関図はこちら


前回までのあらすじ

映画『ルパン3世』のプロモーションのため日本に凱旋帰国したしずかちゃん。ところが、記者会見の席上、奈良で豆腐屋「よねまめ」を営む父・よねすけが自分の本当の親でないことを知らされ、当惑する。そんなしずかちゃんにとどめをさすかのように、今度は父危篤の知らせが。急遽、奈良へ向かった彼女は、病に伏せる父から、自らの生い立ちを聞かされることとなる

(病床に就くよねすけの枕元で涙を流すしずかちゃん)

(Shizuka chan, in floods of tears beside Yonesuke, who is sick in bed)

よねすけ:

実はな、わしはお前の本当のお父さんやないんや。おまえのお母さん

からおまえを預かって、育ててきただけなんや

Yonesuke:

To tell the truth, I am not your real father. You were farmed

out to me by your mother and I just raised you.

しずかちゃん:

そんな!?うそよ!うそって言って、おとうさん!!

Shizuka chan:

What!? Oh, no! Tell me it’s all a lie, daddy!!

よねすけ:

おまえのお母さんはそれはそれは美しい人やった。名前は常盤由紀さ

んとゆうてな、まあ、言うたらわしの初恋の人や

19歳のとき、彼女はここらへんいち名家の御曹司と結婚した。誰もが

うらやむ美男美女カップルやった。わしも結婚式に参加したけどな、

彼女の親戚が座る席だけが、別の話題で盛り上がっているのが印象的

やった

ところがや、ところが、彼女が嫁いだ家には…ごほっげほっ

Yonesuke:

Your mother was amazingly beautiful. Her name is Yuki Tokiwa.

Well, she was my first crush, I would say.

At the age of nineteen, she married a son of the noblest rich

family around this town. They were an enviously good-looking

couple, so everyone admitted.

I attended their wedding, and one impressive thing I still

remember is that only her relatives at their table were talking

wildly about some other topics.

However, however, the family she married into,

they had…..coughing.

しずかちゃん:

お父さん!大丈夫!!?

Shizuka chan:

Daddy, are you all right!!?

よねすけ:

だ、大丈夫や。な、なんのこれしき…

Yonesuke:

I’m all right. That was nothing…..

しずかちゃん:

ほんとうに?でも、お父さん、顔が笑ってるわよ。痛いのなら、正直

に痛いって言って。やせ我慢なんてしなくていいんだから

Shizuka chan:

Are you sure? But, daddy, how come you’re are smiling?

If it does hurt you, say it really hurts.

You don’t need to play the martyr.

よねすけ:

やせ我慢?なにをゆうてる?人間はな、命の危険にさらされた極限の

状態では、自然と笑顔がでるもんなんや。

お父さんが小さいとき、こんなことがあった。学校帰りに友達と近所

の駄菓子屋でパリパリさくら大根を買って歩いていたら、突然、よだ

れをだらだら垂らした、大きな野良犬に出くわしてしまったんや。父

さんと友達は、パリパリさくら大根をその犬に放り投げたが、その犬

は見向きもせん。それどころか、わしらに飛び掛ってきそうな勢いや。

わしらは、せーのーで、で一目散に逃げた。くもの子を散らすように。

そのときや、そのとき、逃げている友達の顔を見たら、なんと、そい

つは必死に逃げながらも、顔は笑っていたんや。それはそれは愉快に

笑っていたんや

Yonesuke:

Playing the martyr? What are you talking about?

Whenever a man is under threat of dying,

a smile naturally comes out on his face.

I recall a story; this happened when I was a child.

Walking on my way back home from school after buying

Paripari Sakura Daikon at a mom-and-pop candy store nearby,

we came across a huge drooling wild dog.

I and my friend just threw the daikon to the dog,

but the dog didn’t even give it a glance.

Rather, the dog was about to pounce on us.

We counted to three, then ran away, I mean ran away in

different directions. Just at that time, I saw my friend

running with me, then, guess what; while making a desperate

escape, he was laughing. That was really a cheery laugh.

しずかちゃん:

ふ~ん…

Shizuka chan:

Hmm….

よねすけ:

どこまでいってたかな。ところがからか…ところがや、彼女が嫁いだ

家には、それはそれは手ごわい姑さんがいたんや。彼女が嫁いだその

日から、彼女と姑さんとの壮絶な闘いが始まったんや――

Yonesuke:

How much have I told you. From, yes, however….however,

in the family she married into, they had a recklessly stubborn

mother-in-law. Upon the day she married, a horrific battle

between her and her mother-in-law erupted–

in floods of tears: 泣き濡れて

* floodsは「洪水、はんらん」。そのまま訳すと、“大量の涙があふれて”

amazingly: 驚くほどに

first crush: 初恋 (口語)

noble: 地位の高い、高貴な

enviously: うらやんで

impressive: 印象的な

talk wildly: (話題などに)盛り上がる

marry into: ~に嫁ぐ

cough: 咳をする

play the martyr: やせ我慢をする(慣用表現)

martyrは、殉教者。なお、「マーター」と発音します。

under threat: 危機に瀕して

mom-and-pop candy store: 駄菓子屋

nearby: すぐ近くに

(例)Do you live nearby?

(この近くに住んでいるんですか)

come across: ばったり出会う

drool: よだれを垂らす

give it a glance: 一瞥する

pounce on: ~に突然飛びかかる

(例)The cat pounced on the mouse.

(猫がネズミに襲いかかった)

in different directions: 様々な方向に、四方八方に

desperate: 必死の

cheery: ほがらかな、元気のいい

(例)Everyone likes her because she always give us a cheery smile.

(彼女は朗らかな笑みを絶やさないので、みんな彼女のことが好きだ)

recklessly: 向こう見ずな、思慮の欠けた

stubborn: がんこな、融通の利かない

mother-in-law: 義母、姑

※今日のトリビア

in-law は姻戚、つまり血はつながっていないけれども法律上の親族ということ。同様に、義父は father-in-law。なお、継母・継父は、stepmother、stepfatherと言います。

horrific: 壮絶な

erupt: 勃発する

* 本来は、「火山が噴火する」の意。

次回予告

父よねすけの危篤を知り、急遽、実家の奈良へ向かったしずかちゃん。病に伏せる父から、自分の生い立ち、そして父よねすけと生みの親である常盤由紀との関係を聞く。次回、しずかちゃんの母が、愛娘をよねすけに託したワケが明らかに!?

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 ジュミック今井(翻訳)

都内で英会話スクールを運営するかたわら、メルマガ『英語がぺらぺらになりたい!』を発行、英単語やフレーズを絵として覚える「イメトレ暗記」が好評を博している。アルファベットと音のルールを1冊にまとめた『フォニックス<発音>トレーニングBOOK』ほか、語学書も多数執筆。