ヒトと犬の絆

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元アメリカ陸軍中尉の加藤喬氏が世界各国に派遣される米兵に現地語を教える独自のカリキュラムを用いて英語を解説!
また、軍隊を切り口に様々な国の背景も紹介します

「軍用犬レックス軍曹」たちK9部隊の活躍が米軍の公報ビデオにありました。これが今回の教材です。
イラク戦争で、米兵の大半の戦死者 (Killed In Action: KIA)と負傷兵 (injured soldier) は車爆弾 (car bomb) やIED (Improvised Explosive Device:手製の仕掛け爆弾) と呼ばれる路肩爆弾 (roadside bomb) の犠牲者でした。巧妙に隠されたIEDを未然に発見・処理するために、爆弾探知犬 (bomb sniffing dog) と軍用犬訓練兵 (dog handler) が登場したのです。
犬は嗅覚の世界に住んでいます。特別に訓練された探知犬になると、爆薬 (explosive) に使われる20種類もの物質をかぎ分けることができるそうです。もちろん犬は「爆弾」だと知って探すわけではなく、隠された「ぶつ」を嗅ぎあてるゲームかスポーツの感覚です。
犬たちにとってこの任務は、本能に根ざした刺激のある遊びなのです。ヒトはそうはいきません。手綱の先の犬がもし誤って地雷に触れたら? 切れ切れの肉片になって飛び散る犬と自分の姿を想像し神経をすり減らします。
理性では抑えることのできない恐怖 (visceral fear) を克服する手段は一つ。自分の犬を一心同体の戦友として無条件に信頼することです。こうしてヒトと犬の間に決して失われることのない絆 (unbreakable bond) が生まれるのです。
敵の銃撃と狙撃に身を晒しながら、パトロールの先頭に立って経路の安全を確保するK9コンビは、古参兵 (seasoned soldiers) たちの絶大な信頼を得るに至りました。そればかりか、実際に犬がIEDを嗅ぎあてる様子を目撃したイラク政府も、米軍の撤退に伴い120頭の探知犬を求めてきたと言います。
米兵の安全を守ってきた軍用犬が、これからはイラク人の命を救うことになるのです。


※再生部分⇒カウンター00:51から

【動画原文】
“This is what dogs were trained to do. This is how they have fun. This is how they play and go ahead and work”
(このために犬たちは訓練されているのです。彼らにとってはこれが楽しい遊びであり、仕事なのです)

“And they work until they just run themselves into the ground”
(犬たちはへたばるまで仕事を続けます)

Iraqi officials have asked for over 120 sniffer dogs over the course of the next year.
(イラク政府は来年、120頭以上の探知犬を所望しています)

“The dogs are phenomenal. That is absolutely the first thing the Iraqis request」
(この犬たちは目を見張るようでね。イラク人が何よりも先に欲しがるものさ)

“They really like having the dogs around. Now that they’re actually seeing the dogs are utilized and actually find stuff, they love using dogs”
(兵士たちは犬にいてほしいんですよ。実際に犬が活用され、本当にブツを見つけるのを見ていますから、犬を使いたいんです)

Dogs like Rex who are keeping Americans safe will now keep Iraqis safe.
(アメリカ兵の安全を守るレックスのような犬は、これからイラク人の安全を守るのです)

 

無料メルマガ『もしも、の英会話入門[軍隊式英会話術]』より
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発行周期:週刊

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加藤 喬

米国防総省外国語学校日本語学部部長
1957年東京生まれ。79年に渡米アラスカ州立大学フェアバンクス校在学中、予備役士官訓練部隊を通じて少尉に任官。
湾岸戦争では整備中隊の中隊長代理として任務。