洋楽『今夜はビート・イット』からの出題

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今夜はたっぷりと痛めつけてや…、え?違うの?

洋楽『今夜はビート・イット』からの出題

j_jyanruロックj_happyo1982年/アメリカj_sakushiマイケル・ジャクソン(Michael Jackson)j_utaensouマイケル・ジャクソン(Michael Jackson)
j_gakkyoku20世紀最大の売上を記録したグラミー7部門受賞アルバム『スリラー(Thriller)』からの3rdシングル。アカデミー10部門受賞映画『ウエスト・サイド物語』をベースにしたビデオも、MTVでヘビー・ローテーション。カッコよいギターソロは、エディ・ヴァン・ヘイレン。1983年、全米チャート3週連続第1位、全英チャート最高第3位、グラミー最優秀レコード賞、最優秀ロック・ボーカリスト賞受賞
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それではさっそく、マイケル・ジャクソンのヒット曲 『今夜はビート・イット』の英語タイトルを見てみましょう。

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な、なにーーー!? Beat It だとーーーー!!?
それじゃ、電子辞書をポチポチポチっと…。へぇ~、「beat」は「打つ」とか「殴る」なんだ! でも、「it」は「それ」…、何を殴るんだろう?う~ん…。

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おや、兄ちゃん、ひとりだけ逃げおくれて、ボコボコにされたんか?

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あ、タイトル英語イストの福光つぁん!べつに誰にも襲われていないっすよ。たしかに、ぼくの英語の記憶はボコボコですけど…。ところで、「it」は「それ」だから、「そいつを殴る」でいいんですか?
お~、ツタ哉くんかいな!どうもで、まいどで、こんにちは!サビで「ビ~デ~」っちゅうてるやろ? 「beat it」ひとまとまりで、まったく逆の意味合いになるんやで!

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ずらかるんだ(逃げろ)

リリース当時、ドーナツ盤レコードの歌詞対訳では、ツタ哉くんの解釈どおり、「そんなもの殴り飛ばせ」でした。それが、CDの歌詞対訳では「ずらかっちまえよ」と訂正されています。正反対の解釈ですが、この誤訳トリビアを覚えておけば、「beat」の基本の意味と、イディオム「beat it」の意味が覚えられますよ。

まず、「beat:ビート」の基本となる意味は、「何度も打つ」こと。(「hit:ヒット」は、ネライをさだめて1回だけ打つこと)ロックのビートも、ドラムでズンチャズンチャと拍子を何度も刻んでいますね。また、「beat +人」で、人をボコボコと殴ることを意味します。

実際、歌詞の中にも、この「殴る」という意味が出てきます。

♪歌詞引用

They’ll kick you, then they beat you

やつらは、君を蹴ったり殴ったりするだろう

その「君」に「beat it」と言うわけですが、「そんなもの殴り飛ばせ」と直訳しても、意味不明です。

実は、「beat it」は「途中でやめて出ていく、逃げる」という会話フレーズ。歌詞の中でも、「better run」や「better leave」というフレーズで、「逃げた方がよい」とアドバイスしています。

ビデオでは、熱くなってケンカを始めた連中の間に、マイケルが割って入り、

♪歌詞引用

It doesn’t matter who’s wrong or right
Just beat it

誰が正しくて誰が悪いかなんて、関係ない
とにかくずらかるんだ

と歌うと、敵どうしが一緒になって踊りだします。ムーンウォークではなく、明らかに後ずさりしているステップや、降参~!というような振り付けなど、ずらかるためのダンスっぽいですね。

ちなみに、ビデオのベースとなった『ウエスト・サイド物語』冒頭でも、同様シーンで「Beat it!」という台詞が出てくるのでチェキラ!ここでは、相手に対して「失せろ!」という意味で、こちらの方がよく使われるようです。

「beat」を日常でつかってみよう!

Gian   :I’m gonna beat you up if you don’t go away!
Nobita   :Why?
Suneo   :Just beat it!

ジャイアン:どっか行かなきゃ、お前をぶん殴る(やっつける)ぞ~!
のび太  :なんで~?
スネ夫  :いいから失せろ!

ふくみっつぁんのプロフィール

本名・福光潤(ふくみつじゅん)。
1971年、兵庫県生まれ。特許翻訳者。 英語講師、日本語学校の海外営業、霞ヶ関の特許翻訳専門会社勤務を経て、現職。 メルマガ『日刊タイトル英語』を発行、 ホームページ『タイトル英語』を運営。 英語のおもしろさを読者と分かちあう。英検1級。TOEIC955点。 たまにシンガーソングライター&イラストレーター。
著書『翻訳者はウソをつく!』(青春出版社)好評発売中!

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