「かわいい」が世界を幸せにする!?

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「かわいい」が世界を幸せにする!?

By: Carolyn Coles

第90回:実は手塚治虫先生のおかげ?

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(1)どこの国でも子どもは可愛い

世界中には、多種多様な文化や価値観を持つ様々な民族や人種が住んでいる。

しかし、どんなに文化や価値観が違う異民族、異人種であっても、共通することもある。

例えば、赤ちゃんや子どもは、他民族、他人種の子どもの方でも可愛い。

いや、むしろ不思議なことに、他民族、他人種の子どもの方が、より可愛く見えるような気すらする。

とにかく、赤ちゃんや子どもを見ると可愛いな、守ってあげたいなと感じる感覚は、世界共通だろう。

これはおそらく、人類が生き残るために必要な本能として、DNAに刻みこまれている感覚に違いない。

だって、人間の人生を年齢別に見たとき、最も生存率の低い赤ちゃんや子どもを、可愛い、守ってあげたいと、大人たちが思えなかったら、その種族はすぐに絶滅してしまうからだ。

だから、よほどなことでもない限り、どこの国でも、どんな民族や人種でも、子どもは可愛いがられている。

これに関連しては、興味深い科学的な研究も存在する。

1940年代初頭、オーストリアの動物行動学者、コンラート・ローレンツ(Konrad Lorenz)さんが、

「かわいらしさがヒトの感情に一定の情動反応を誘発する」

と提唱した。

ローレンツさんは、動物の持つ「刷り込み現象」の発見者としても有名で、1973年には、「個体的および社会的行動様式の組織化と誘発に関する研究」でノーベル生理学・医学賞を受賞しているほどの方だ。

彼は「かわいらしさ」についても研究を行っており、それによると、人間の「乳児」や動物の「ひな」の持つ特徴(つまり、かわいらしさ)は、人間心理の奥にある母性や父性を刺激することで、人間の心理に温かさや親近感をもたらし、思いやりの行動パターンをとらせる、というのである。

実に興味深い。

また、ローレンツさんは、この理論を作る過程で、人間の「乳児」と「成人」や、動物の「ひな」と「成体」のプロポーションの違いを明らかにした

『幼児スキーマ』(Kindchenschema)

というものを開発した。

要するに、動物行動学から見たかわいらしさには、次のような特徴があると定義したのである。

–≪動物行動学から見たかわいらしさ≫–

◆体に対して、頭が大きいHead large and thick in proportion to the body

◆顔の他の部分に対して、額が大きいProtruding forehead large in proportion to the size of the rest of the face

◆顔を上下に分けた真ん中の線よりも下に位置する、大きな目Large eyes below the middle line of the total head

◆短く、ずんぐりした手足Short, stubby limbs with pudgy feet and hands

◆丸みを帯び、ふくよかな体型Rounded, fat body shape

◆柔らかく、ぷにぷにとした弾力のある皮膚Soft, elastic body surfaces

◆まるく、ぽっちゃりした頬Round, chubby cheeks

◆不器用さClumsiness

Konrad Lorenz, The Foundations of Ethology (New York: Springer-Verlag,1981), 164.————————————————

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(2)日本の「カワイイ」文化の源?!

もうお気づきの方もいらっしゃるかもしれないが、ローレンツさんが定義した『幼児スキーマ』の大半は、どれも日本の「カワイイ」文化を背景に持つキャラクターの特徴に極めて近いものになっている。

つまり、なんで日本の「カワイイ」文化が、世界中でユニバーサルに受入られ、高い評価を得られているのかを考えるうえでも、大いに役立つかもしれないのだ。

いや役立つどころの話じゃないかもしれない。

ひょっとすると、この『幼児スキーマ』自体が、日本の「カワイイ」文化の源とか、発祥地だったりする可能性も考えられるのだ。

この『幼児スキーマ』の特徴は、日本の漫画の基礎を作った漫画の神様である手塚治虫先生の人気キャラクターの特徴にも、ことごとく合致する。

手塚治虫先生は、もともと医者の卵だった。

阪大医学部に通っていた学生時代の手塚先生は、医学的な知識に基づきこの『幼児スキーマ』などを独自に研究して、

「人間の心理に温かさや親近感をもたらし、思いやりの行動パターンをとらせる」

という科学的な特徴を理解したうえで自身の描く漫画のキャラクター(アトム、レオ、サファイア等など)を創作したのかも?

だからこそ大ヒットした・・・ということだったりするかもしれないのだ。

さらに、『幼児スキーマ』の特徴を持つキャラクターは、手塚先生だけに留まらなかった。

当時、手塚治虫先生の住むアパート(トキワ荘)には、将来、漫画家を夢見た若者が集まっていて、先生のアシスタントをしていた者もいたため、彼らの作品のキャラクターの多くもまた『幼児スキーマ』の特徴を持つキャラクターになっているのだ。

トキワ荘から、巣立っていった漫画家には、例えば、

『天才バカボン』の赤塚不二夫、『サイボーグ009』の石ノ森章太郎、『ドラえもん』の藤子不二雄

などがいる。いずれも歴史に残るほどの人気漫画家で、手塚先生と彼らの、漫画やアニメの影響力は、とんでもなく大きく、その後の日本の様々なもののデザインに影響を与えたと考えられる。

近年、日本で流行っている「ゆるキャラ」の多くも、その1つと言えるだろう。

日本の「カワイイ」文化が、突出した個性を発揮できている最大の原因は、日本には手塚治虫先生がいらっしゃったから、・・・なのかもしれない。

いずれにしても、、多種多様な文化や価値観を持つ様々な民族や人種の方々と接する際、どういったコミュニケーションを取れば良いのか勉強しているというような方は、とりあえず、手塚先生の作品を一通り読んでおいた方が良いだろう。

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「多様性のもたらすもの」のコーナーでは、より良い日本の未来を築くうえで、役立ちそうな発想や情報を織り交ぜながら、ニューヨークの最大の魅力である「多様性」について感じたことや思っていることを書き綴っていこうと思います。

また、逆に、人口の98%以上が日本人であるため、ニューヨークのような「多様性」が社会に見られない日本だからこそ持つ長所や強みなどについても取り上げていきます。

いずれにしても、日本の中にいると気づかなかったり、見過ごしがちなアイデアや視点を少しでもお届けできれば良いかなと思います。

りばてぃりばてぃ
ニューヨークの大学卒業後、現地で就職、独立。マーケティング会社ファウンダー。ニューヨーク在住。
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