「笑っていいとも!」の最終回・タモリさんから学ぶグローバル人材の素養

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「笑っていいとも!」の最終回・タモリさんから学ぶグローバル人材の素養

By: yy

タモリさんから学ぶグローバル人材の素養

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(1)「笑っていいとも!」の最終回

海外から日本の様子を見てると、いろいろ気づかされることは多い。
日本国内を別の角度から見れる、ということもあるのだろう。
最近の例だと、32年間の歴史に幕を下ろした「笑っていいとも!」もその1つだ。

特に、司会のタモリさんがすごいと思う。

日本から海外へ事業進出したい企業の方々には、タモリさんの姿勢や考え方が、とても良い模範になるかもしれない。
日本文化を海外へ広めようという方々にとっても参考になるだろう。
いや、海外旅行へ行く方々にも、タモリさんから学ぶことが多々あるような気がする。

どういう意味か?

詳しい説明に入る前に、よくご存知ない方のために、3月31日に最終回を迎えた『笑っていいとも!』関連で、どのような話題が報じられているか、以下、ざっと見てみよう。

『笑っていいとも!』の最終回は、日本のテレビ史、芸能史に残る出来事となった。

まずは、3月31日お昼。

新宿スタジオ・アルタからの最後の放送となった通常放送。
牧師姿のタモリさんによる漫談でスタート。
最後のテレフォンショッキングのゲストは、ビートたけしさん。
紋付き袴姿で登場しタモリさんに表彰状を読み手渡した。
最終回なのに明日のゲストとして、明石家さんまさんに電話して、いわゆるお笑い界のビックスリーの共演を演出。
続いて特別版の曜日対抗コーナー。
月曜日のレギュラー陣だけでなく、香取慎吾さん(月)、中居正広さん(火)、爆笑問題の太田光さん(水)、笑福亭鶴瓶さん(木)、関根勤(金)などの各曜日レギュラーの代表者が特別出演。
誰もが番組のメイン司会者をできるくらい豪華な顔ぶれ。
日本のお昼のテレビ番組では、珍しいキャスティングだった。

なお、画面上には一切出てこなかったが、最後の放送を現場で見るために、とんねるずの石橋貴明さんや、SMAPの草なぎ剛さんらが会場に来ていた。
石橋さんは、タモリさんに強い恩義を感じている。
とんねるず結成前の素人時代に、相方の木梨憲武さんと日本テレビの『お笑いスター誕生』に出演した際、タモリさんと故赤塚不二夫さんが高く評価してくれたことが芸能界入りのキッカケとなっているためだ。
そんなわけで、とんねるずは、今年1月から番組終了まで、急遽、曜日を固定ぜずにゲリラ出演するレギュラーにもなっていた。

タモリさんからの最後の一言は、「明日も見てくれるかな?」。
最終回の平均視聴率は16.3%、瞬間最高視聴率は18.4%だった。
なお、32年と6ヶ月間、全8054回の平均視聴率は11.5%である。(後番組の『バイキング』は、現在、平均視聴率3%台と低迷中)
そして、同日夜8時から3時間超えの豪華特番『グランドフィナーレ 感謝の超特大号』が生放送された。

アルタを模したフジテレビのスタジオからの放送で、会場に設けられた客席には、32年間にレギュラーを務めた大勢の芸能人が集合。
タモリさんが「ウキウキWATCHING」を歌いながらのオープニング。
相変わらず、少し照れた感じの恥ずかしそうな独特の歌い方だった。
その後、タモリさんがあこがれる吉永小百合さんが中継出演すると、顔を赤らめて照れるタモリさん。
タモリさんって、こんなに長い間、それこそ平日に毎日32年間も生放送の番組をやってたのに、実は、今でもよく照れたり、恥ずかしがったりするのである(笑)。
その後、これまで出演したレギュラーの中から選ばれた大物と、タモリさんとのトーク・コーナーへ。

予定されていた順番は、明石家さんまさん、ダウンタウン、ウッチャンナンチャン、ナインティナイン、爆笑問題、とんねるず・・・。
それぞれ15分の持ち時間で区切られ、共演はしない予定だった。
それでも、これだけの大物が同じ番組に出演すること自体が珍しい。
いや、珍しいどころの話じゃない。そんな番組、今までなかった。
特に、とんねるずとダウンタウンや爆笑問題とダウンタウンは、過去にほとんど共演したことがなく、不仲説もささやかれていた。
そして結果的に、タモリさんのために集まったこの面々は、全員が同じステージに立ち、共演することになる。

この出来事は、この番組を見ていた他のお笑い芸人や、業界関係者やファンの方々にとって大事件となった。

会場でその様子を生で見ていた大勢の芸能人は、その後、他のテレビやラジオの番組や、自身のブログやツイッターなどで口々に何が起こったかを語り、関連情報はインターネット上に溢れかえった。
別のテレビ局の楽屋で待機していたお笑い芸人の中には、「大変だ!大変だ!とんねるずとダウンタウンが共演してるぞ!!!」と他の出演者に伝えてまわった人もいた。
車で移動中、ワンセグでこの様子を見ていて、車を止めて見入ってしまったというお笑い芸人さんもいた。

そうした情報がインターネット上に溢れかえっていた。
ちなみに、日本国内と違って外国に住む日本人は、こうした日本のテレビ番組の様子をもっぱらインターネット経由で知ることになる。
逆に、インターネット上に出てない情報はこちらに届かない。
だから、笑っていいともの最終回でいったい何が起こったのかについては、たぶん、日本国内にいる方々よりも海外にいる日本人の方が、何倍も詳しくなっている気がする。

歴史的な出来事なので、もう少しその内容についてまとめておこう。
タモリさんと過去の大物レギュラーとのトークコーナーは、さんまさんからスタート。

前述の通り、一組15分の持ち時間で、共演はなし、のはずだったが、さんまさんが予定時間を大幅に超え、1時間ほど話続けた結果、順番を待っていたダウンタウンとウッチャンナンチャンが、「長い!!!」と言いながらステージに乱入する。
さんまさんご本人の後日談によると、ちゃんと15分で帰るつもりだったし、時間がのびている間も、キッカケさえあればすぐに帰ろうとしていたけど、番組スタッフも、タモリさんもまったく帰す気配がなかったから・・・とのこと。
とにかく、タモリさん、さんまさん、ダウンタウン、ウッチャンナンチャンが同じステージに立ったこの時点で、これまで見たことないかなり珍しい状況になった。
ここで、ダウンタウンの松本人志さんが誰よりも通る大声で
「ここにとんねるずが出てきたら、インターネットが荒れる」
という主旨の発言をする。
そして、この発言を楽屋で見ていたとんねるずの石橋さんは、インターネット上に「石橋がキーマン」という書き込みを見て、乱入するスタンバイへ。
別の楽屋にいた相方の木梨さんや、爆笑問題の二人の楽屋に、
「殴りこみに行くぞ」
とマネージャーさんに伝えさせた。
石橋さんが足早にスタジオへ向かって廊下を歩いていると、別の楽屋の扉が開いて、木梨さん合流。
何も語らず前を向き、石橋さんと並んで歩き出す背の高い二人。
この姿を後ろから見ていた人は、まるで映画のクライマックス・シーンのようだったとのこと。
また、この時、とんねるずが乱入するという情報を間接的に聞いたナインティナインの岡村さんは、まだ楽屋でパンツ姿だったが、急いで衣装を着て、後を追いかけることになる。
ちなみに、笑福亭鶴瓶さんは、とんねるずさんの後、一番最後に出てくる順番になっていたが、NHKの裏番組に出演していた関係で、ずっとこの様子をスタジオで見ていたとのこと。
また、鶴瓶さんは、
「もし裏番組がなかったとしても、あんな恐ろしい場所にはとても出れない。」
という主旨の感想を述べている。
とにかく、こうして豪華な面々がタモリさんを囲み、同じステージ上に立つこととなった。
現場にいた他の出演者や共演者から漏れ聞こえてきた情報によると、CM中にとんねるずの石橋さんがダウンタウンの松本さんに「松本がネットが荒れるからって言うから出てきたよ」と告げ、松本さんは「すみません」と応えたとのこと。
同じくCM中に、爆笑問題の太田さんが、松本さんに「乱入してすみません」と告げると、「ありがとうな」と松本さんが応えたという。
本来なら交わることのなかった人たちが一堂に会したことで、番組スタッフも動揺し、あの時にスタッフから出たカンペには、

『みんなで仲良く話しましょう』
としか書かれていなかった。

その後、自然にみんなでタモリさんに「お疲れ様でした」と告げるパターンが生まれ、その合間に壮絶なフリートークが繰り広げられた。
これだけの面子が集まったら収拾がつかなくなるところだが、木梨さんが、客席にいたサンコンさん、元長野県知事の田中康夫さん、脚本家の橋田壽賀子さん、柳沢慎吾さんらをステージに引きずりあげたことで場面展開や構成が自然に生まれて助かった。
この流れの中で、自分の仕事は十分に果たしたと思ったさんまさんは、CM中に一人でステージから退出。
さんまさんは、あの場に出続けていたら、最後の笑っていいとも!の主役であるタモリさんに申し訳ない結果になってしまうと考えた。
しかし、残された面々は、いずれも看板番組を持つお笑い芸人ばかりとなり、誰が仕切っても角が立ちかねない状況に。
そこで客席から引きずり出されたのが、SMAPの中居さん。
カンペで『中居さん仕切って!』とADから指示が出された。
しかし、中居さんは後日談で、「こんなの仕切れるわけないじゃん」とお手上げだった心中を述べている。
そんな壮絶な共演が続く中、ダウンタウンの松本さんは、「もうええんちゃう?そろそろ帰るで」と事務所の後輩でもあるナインティナインの矢部さんに耳打ちする。
松本さんをこっそり掴んで離さずに、
「駄目です。もう少しいてください。」
と矢部さん。
矢部さん曰く、「ここで最初の順番通り、先にダウンタウンさんやウッチャンナンチャンさんに帰られたら、もうその後どうしていいかまったく分からなかったから」とのこと。
だから、矢部さんはCMに入る度に「もう少しです」と松本さんを説得し続け、
「番組のADになった気分だった」
とのこと。
そんな歴史的なトークコーナーも無事に終わって場面展開。
レギュラーの中居さん、香取さん、草なぎさんに加えて、木村さん、稲垣さんも一緒に登場して、SMAP全員で、タモリさんに持ち歌の「ありがとう」を生で披露。
楽屋でトークコーナーを見ていた木村さんは、この後、どんな空気になっているかまったく分からず、どうしようか焦っていた、とのこと。
なお、本番では頑張って笑顔でいたが、この場面のリハーサル時に、草なぎさんはすでに号泣していたという。

そして最後は、現レギュラー陣一人一人からタモリさんへのお礼のスピーチへ。
当初このスピーチは、タモリさんを泣かせるくらい真面目な内容にしようという演出だった。
しかし、ベッキーさん、AKB48の指原さんに続いて登場したバナナマンの二人は、設楽さんの真面目なスピーチでフリをきかせた後、日村さんが郷ひろみさんのモノマネを思いっきり披露し、その後の流れを変えた。
設楽さん曰く、
「最初から準備していたわけじゃなくて、あの場面、少しグダグダな流れになってきたから、直前に日村さんと話してやった」
とのこと。
その結果、レギュラー陣それぞれの持ち味が活かされ、緊張感ある中に、笑いも感動もあるスピーチが続くことになった。
それは、これまであまり知られることのなかったタモリさんとレギュラー陣の関係性もよく分かる内容だった。
特に、ローラさん、香取さん、中居さんらのスピーチは感動的で、インターネット上に多くの感想が溢れかえった。

一番最後にはタモリさんのスピーチ。

その内容は視聴者、スタッフ、出演者への感謝の言葉だけで、いかにこの番組がすごかったとか、自分がすごかったというような発言は一切なかった。
実にタモリさんらしいスピーチだった。
これだけのいくつもの奇跡の共演、奇跡の場面を実現させ、多くの人々に心から感謝されるタモリさんの偉大さを、改めて知る機会となったと言えるだろう。
この夜の特番の平均視聴率は28.1%、瞬間最高視聴率は33.4%。
平均視聴率は28.1%は、「第90回箱根駅伝・復路」(1月3日日本テレビ)の27.0%を抜き、今年日本で放送された全番組の中で最高の結果となっている。

〔ご参考〕●視聴率いいとも!平均28・1%、今年最高で有終の美http://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2014/04/02/kiji/K20140402007893790.html

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(2)タモリさんのすごさ

間違いなく日本のテレビ史、芸能史に残る「笑っていいとも!」はこうして幕を下ろした。
これまで日本には「欽ドン」他萩本欽一さんの番組や、ドリフターズの「8時だョ!全員集合」、「俺たちひょうきん族」、「天才・たけしの元気が出るテレビ!!」、「進め!電波少年」など等、数多くの人気番組がある。
しかし、この「笑っていいとも!」ほど長く続いた番組はないし(ギネス記録になっている)、最後の最後まで視聴者にも、出演者にもこれほど愛されたと感じさせる番組はこれまでなかっただろう。

それは「笑っていいとも!」という番組そのものの魅力によるところもあるにはあるのだろうが、それ以上に、司会を務めたタモリさんのお陰だと思う。
その証拠に、タモリさんには、「笑っていいとも!」の他に1986年10月24日から27年以上も続く『ミュージックステーション』や、1982年10月8日から32年以上も続く『タモリ倶楽部』など、とにかく長寿レギュラー番組が多い。
不定期特番のオムニバステレビドラマの『世にも奇妙な物語』でも、1990年4月19日の第一回目の放送から23年以上もストーリーテラーを務めている。

言う間でもなく、この20〜30年の間に日本社会は大きく変化してきた。
特に、流行り廃りのスピードが速いのがテレビ業界だ。
そんな日本のテレビ業界で、いくつもの長寿番組(しかも番組の内容は様々)を抱えるタモリさんのような芸能人は、他にいない。
特別な存在だ。

そんな人は殆どいないと思うが、もしタモリさんを知らない日本人が、タモリさんのプロフィールだけ見たら、よっぽど魅力的な容姿を持ち、特別なスター性を持つ芸能人をイメージするだろう。
しかし、タモリさんには、そういう分かりやすいスター性はない。
これは実に興味深いことだ。

実際、タモリさんはいつまで経っても、大舞台で脚光を浴びることに慣れず、どこか照れて、恥かしそうな素振りを見せる。
いわゆるスターとは、まったく逆の個性を持つと言ってもいいのかもしれない。
さらに、本職のお笑いでも、日本全国にブームを巻き起こすようなギャグや、漫才やコントのネタがあったわけでもない。
特にこれといった受賞歴もない。
むしろ、タモリさんが得意なのは、イグアナや生まれたての子馬のモノマネとか、4ヶ国語マージャンなど、一般受けしないマニアックなネタばかりだ。
そう言えば、タモリさんと共演されたことのある方々は、
「タモリさんは他の人が指摘しない事に興味を持って聞いてくる」
というような感想をよく述べていたりする。

つまり、一般受けするありがちな話題じゃないところに、タモリさんは興味を持ち、掘り下げてくる、ということだ。
そうタモリさんから発信される情報は、通常、日本では「一般受けしないもの」とか「ニッチ向けなもの」ばかりなのだ。
例えば、タモリさんが興味あるのは、古い地図や坂、鉄道など。
長寿番組になっている『タモリ倶楽部』は、まさにそんなタモリさんの趣味のカタマリのような内容になっている。
普通、一人でも多くの人々に番組を見てもらおうと思ったら、多くの方々は一般受けする内容にしようと考えるだろう。

これは、テレビ番組に限らない。
何かのモノやサービスを売る人も、より多く売りたいと考えれば、できる限り、一般受けするものにしようとする。
つまり、いわゆる「売れ筋」商品を売ろうとする。
買う人(=お客さん)もみんなに人気の「売れ筋」を欲しがちがちだ。
そうなると当然、作る人(=メーカー)も「売れ筋」を作る。
作る人、売る人、買う人が、みんな「売れ筋」に集中する。
日本では特にこうした傾向が強い。
なぜなら、日本は人口の98%が同じ文化や価値観を持つ日本人で構成されていて、基本的に同じような趣味、嗜好を持つと考えられているからだ。
みんな基本的に同じような趣味、嗜好を持っているから、「売れ筋」に集中すれば一番楽で簡単に儲かる。
自分で「売れ筋」を作り出せなくても、今人気の「売れ筋」を真似して売ってるだけでも、そこそこビジネスが成立してしまったりもする。
だから、「何が流行っているか?」という話題も多い。
しかし、その分、競合は厳しくなる。

最近、牛丼店の「東京チカラめし」が直営店の約8割にあたる68店舗を売却すると発表したり、「すき家」が人手不足から一斉に一時閉店したといったニュースが報じられていたが、これも牛丼店といった「売れ筋」商品に多くの企業が集中しし過ぎた結果だろう。

〔ご参考〕
●「東京チカラめし」68店舗を売却 三光マーケティングフーズhttp://www.nikkei.com/article/DGXNASDZ100ER_Q4A410C1TJ2000/
●すき家 一斉に一時閉店の謎http://www.nikkansports.com/general/news/p-gn-tp0.html

とにかく、このように大衆受けする「売れ筋」に集まるということは、日本ならではの特徴の1つと言えるだろう。

多種多様な文化や価値観を持つ様々な人種や民族から構成される外国、特にニューヨークのような街とは大きく違うところだ。
多様性のある消費市場は、小さなニッチな市場が集まってできたもので、みんなに一斉に売れたり、興味をもたれるような「売れ筋」はなかなか生まれない。
そんな「売れ筋」はない、と考えた方がいいくらいだろう。
また、現在「売れ筋」と言われているものでも、もともとはニッチな消費市場を対象にしたものが、時間をかけて徐々にマス向けに育ってきたものだったりする。

だから、ニューヨークでは、
『いかにニッチからマスへ育てるか?』
を考えることがマーケティング業界に関わる人々の基礎知識というか、半ば常識になっている。

「売れ筋」を売ればいい、と考える人が多い、日本とは大違いだ。
この違いを分かってない人が、ニューヨークに事業展開しようとしてやってくると、マーケティングの考え方の違いに驚くことになる。
日本では、ろくに何も考えず、一般受けする「売れ筋」を真似してればなんとかなったが、ニューヨークでは
『いかにニッチからマスへ育てるか?』
を考えて動かないと結果は出ない。

しかも、ニューヨークでそうやってニッチからマスへ育つのは、独創性や個性を持っている最初は「一般受けしないもの」とか「ニッチ向けなもの」ばかりなのだ。
そうした独創性や個性を持つものが、地道にファンや支持者を増やして、より幅広い人々に受け入れられるようにり、ニューヨークに定着する。
そうしたものは、一過性のブームではなく長く続くという特徴もある。
この日米(特にニューヨーク)の消費市場の特性の違いについては、過去に何度も指摘してきたが、実際に、ニューヨークの街角の様子を見たことがない日本国内の人には、いまいち分かりにくかったかもしれない。

でも、もう大丈夫。
タモリさんを参考や模範にしてみたら、よく理解できるだろう。
タモリさんの芸風は、「一般受けしないもの」とか「ニッチ向けなもの」ばかりで、日本全国にブームを巻き起こすようなギャグや、漫才やコントのネタがあったわけでもない。
外国にやってきた多くの日本人のように、大舞台で脚光を浴びることに慣れず、どこか照れて、恥かしそうな素振りを見せる。
いわゆるスターとは、まったく逆の個性だ。

しかし、そんなタモリさんこそが、日本で最も多くの長寿番組の司会者を務めている。
しかも、それらのどの番組も、タモリさんが何か全国から注目を集めるようなことをやったわけじゃない。
どちらかというと一部のニッチなファン向けからはじまって、徐々にファンや支持者を増やし、人気が定着したという感じだろう。
まさにタモリさんの番組、あるいはタモリさんご自身も『ニッチからマスへ』育ったものと言えるのではないか。

・・・というわけで、海外へ事業進出したい企業の方々には、タモリさんの姿勢や考え方は、とても良い模範になる気がする。
実際、アメリカにちゃんと定着した日本文化を背景に持つ商品やサービスの多くは、なんとなくタモリさん的な存在感を持つものが多い印象がある。
決して、一般受けする「売れ筋」じゃないのだ。
そうした日本文化を背景に持つ商品やサービスの多くが、大舞台で脚光を浴びることに慣れず、どこか照れて、恥かしそうな素振りを見せるところも似ている。
関係者の方々への心配りもあり、みんなに愛されているところまでそっくりだ。
そういう意味では、もしかするとタモリさんの芸風は、最初からグローバル向けだったと言えるのかもしれない。

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(3)誰から何を学ぶかが重要

・・・というわけで、最終回を迎えた「笑っていいとも!」をキッカケに、タモリさんとグローバル人材について、いろいろと考えてみた。
少なからず気づかされることや、学ぶこともあったと思う。
誰から何を学ぶかということは重要だ。
それによって、ぜんぜん違う結果になってしまうこともあるだろう。
日本ではごくごく一般的で、もうそれしか存在しないんじゃないかっていう「売れ筋」に集中するマーケティング手法から学び、その手法を真似てブームを人工的に作った例に、韓国ドラマやK-Popと呼ばれる韓国人歌手がいる。
確かに日本では、一時的にブームが起きたが、米国ではまったく相手にされなかった。
しかも、日本でも「売れ筋」主義で得た人気や流行は長くは続かなかった。
作り手も、売り手も、買い手も「売れ筋」に集中することは、日本ではよくあることだ。
その結果、一発屋芸人とか、一発屋歌手とか、一過性のブームで消え去る商品もよく出てくる。
しかし、そうしたことを十分に理解してない韓国ドラマやK-Popは、引き返すことの極めて難しい一発屋の道を思いっきり進んでしまった。
本当に、誰から何を学ぶかということは重要だ。

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うまく言葉で表現できなかったのでカットしましたが、あれだけ長く生放送のテレビ番組の司会をやっていて、いまだに照れたり、恥かしそうな素振りを見せるタモリさんの姿にも、いろいろ考えさせられました。
その感性は人を魅了する重要な能力なのかもしれません。

りばてぃりばてぃ
ニューヨークの大学卒業後、現地で就職、独立。マーケティング会社ファウンダー。ニューヨーク在住。
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