何でもアリじゃない!多様性ある社会で大事なものとは

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何でもアリじゃない!多様性ある社会で大事なものとは

By: Nick Hubbard

第81回:多様性ある社会で大事なもの

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(1)何でもアリじゃない

毎回、このコーナーでは、ニューヨークの最大の魅力である「多様性」について感じたことや思っていることをつらつらと書いている。

ニューヨークでは、人種も民族も、文化も価値観も、言語も何もかもが違う様々な人々が共に暮らす。なんだかんだ言っても、人口の98%が日本人という日本とは、本質的に大違いだ。

こういう話題は、日本ではほとんど報じられることがなかった。

しかし、最近になって日本の報道でも、多様性ある社会がどうこうという話題が、突然、増えだした。

4月4日、安倍晋三首相が、経済財政諮問会議と産業競争力会議の合同会議で「女性の活躍推進の観点から外国人材の活用について検討してもらいたい」と述べ、女性の就労機会を増やすため、家事などの分野で外国人労働者の受け入れを検討するよう指示した・・・という出来事もあった。

また、あわせて政府は同日、全国的な建設業の人手不足を解消するため、外国人労働者の活用を拡大する緊急対策を決めた、という。

〔ご参考〕
●外国人労働者拡大へ
首相、家事支援など活用指示
「女性の活躍推進の観点から」

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/140404/plc14040423520026-n1.htm

こんなに急に、今の日本で、『外国人労働者の活用』なんて可能なのだろうか?

とにかく急すぎる。

はっきり言って、メリットよりもデメリットの方が多い気がする。

少子化が急速に進む日本では、そんなこと言ってられないと主張する方もいるだろう。

でも、外国人労働者をちゃんと活用したいのであれば、その前にやることがある。

その前に、日本国内の日本人が、人種も民族も、文化も価値観も、言語も何もかもが違う様々な人々と共存するために、何が一番大切になるのか、よーく理解しなければいけない。

日本のテレビ番組などで、この手の話になると、社会の多様性が話題になり、まるで「何でもアリ」な世の中がとにかく良いことで、そうなるべきと発言する人まで出てきたりするが、大間違いだ。

また、ニューヨークのような、多様性があって活気溢れる社会が実際にどのようなものかを分かっていない人ほど、「何でもアリ」な世の中がとにかく良いと考える気もする。

「何でもアリ」なわけがないのに。

多様性のある社会ほど、そこでは誰もがみんな一番大事に考えているものがある。

それは、一言で言えば「地元愛」だ。自分たちが住むコミュニティ(地域)に対する愛と言っても良いだろう。さらにこうした「地元愛」は、広い意味では「愛国心」となる。

アメリカに住んでいる人であれば、外国人であっても、アメリカという国家に対する「愛国心」が多くの場面で求められる。

「愛国心」とまでいかなくても、アメリカという国家に対する強い「尊敬の念」や、十二分な「配慮」をできることが、この国で暮らすための大前提になっている。

もし、そういった「愛国心」や「尊敬の念」や「配慮」がなければ、世界中から集まった多種多様の人種や民族が、共存できるわけがないのだ。

だから、ニューヨークの街角を歩いていても、あちこち、そこらじゅうでアメリカの国旗を見かける。

今週から野球のメジャー・リーグが開幕したが、メジャー・リーグの試合前に、どこの球場でも必ず、アメリカの国歌が流され、その間、スタジアムにつめかけたお客さんの大多数は、席を立ち、右手を左胸にあてるなどして礼を尽くす。
試合によっては、国歌斉唱のためにゲストの歌手(または著名人や時の人)が招かれることもある。

国際試合の話じゃない。

米国内のチーム同士の普通の試合でもこれが当たり前だ。

さらに、野球だけじゃない。

アメリカではアメフトやその他多くのスポーツでも、試合前に国歌が流され、国歌斉唱のための特別ゲストがスタジアムに招かれたりする。

スポーツの試合を見にスタジアムに行くのは、何もアメリカ生まれのアメリカ人に限ったことじゃない。

外国から来た移民や、留学生や駐在員や、旅行客だって、たくさんの人々がスタジアムへ出向くが、彼らの多くが、アメリカの国歌が流されている間、直立し、敬意を払う。

自分の母国の国歌じゃなくてもだ。

それが、多様な人種や民族によって作られているアメリカの当然の常識なのである。

何でもアリってわけじゃないのだ。

一方、日本はどうだろうか?

日本の街角を歩いていて、日本の国旗を見かけることなんて、滅多にない。

国際試合でもなければ、国歌が球場で歌われることもない。

それどころか、公立小学校、中学校などの学校の先生が、卒業式や入学式のような公式行事においてすら、日本の国歌を歌わず問題になったりしている。

そんな先生から教えてもらった子どもたちが、果たして、多様性ある社会で一番大事なものが何なのか、理解できるようになるのだろうか?

公務(仕事)を無視し、自分の価値観を表現する「何でもアリ」な世の中が良いものだとか、大きな勘違いをするようになってしまう気がする。

本物のグローバル人材は、そんな教育から育つわけがない。

とにかく、本当に多様性のある社会には、人種も民族も、文化も価値観も言語も何もかもが違う人々を結びつける大きな枠組みとして、地元愛や愛国心というものが明確に存在しているということだ。

こんな明らかな事実を、日本国内に住む多くの日本人はほとんど理解していない。

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(2)多様だからこそ国歌が大事

最後にもう1つ、分かりやすい例を挙げておこう。

昨年2013年にニューヨークで開催されたLGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーを意味する略称)のためのイベント「NYC Pride Rally」(いわゆるゲイ・パレード)の前夜祭に、歌手のレディ・ガガさんが、サプライズ出演した時の話だ。

ガガさんは、いまだに社会的少数派で、弱者である同性愛者の方々の前で、「皆さんの苦しみ、悲しみを理解しています」と感動的なスピーチを行った後、ある歌をうたった。

その歌とは、アメリカ国歌だ。

彼女が歌い終わると、同性愛者の方々も大きな歓声をあげた。

まさに多様な価値観を持つ人々も、アメリカという1つの国に対する思いや愛でつながっているということを示す例と言えるだろう。

そのシーンの映像がYouTubeで見れるので、ご紹介しようと思うが、その前にせっかくなので、以下、アメリカの国歌の歌詞から・・・。

Oh, say can you see,
by the dawn’s early light
What so proudly we hailed
at the twilight’s last gleaming

おお、見えるだろうか、
夜明けの薄明かりの中
我々は誇り高く声高に叫ぶ

Whose broad stripes and bright stars,
through the perilous fight.
O’er the ramparts we watched
were so gallantly streaming

危難の中、城壁の上に
雄々しくひるがえる
太き縞に輝く星々を我々は目にした

And the rockets’ red glare,
the bombs bursting in air,
Gave proof through the night that
our flag was still there,

砲弾が赤く光を放ち宙で炸裂する中
我等の旗は夜通し翻っていた

Oh, say does that star-spangled
banner yet wave.
O’er the land of the free
and the home of the brave!

ああ、星条旗はまだたなびいているか?
自由の地 勇者の故郷の上に

なおこの歌詞は、アメリカ独立戦争
の時に書かれた詩がもとになって
いる。

〔ご参考〕
●Lady Gaga Singing the National
Anthem @ the NYC Pride Rally 2013
http://youtu.be/Kdd6JzJgJGY

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「多様性のもたらすもの」のコーナーでは、より良い日本の未来を築くうえで、役立ちそうな発想や情報を織り交ぜながら、ニューヨークの最大の魅力である「多様性」について感じたことや思っていることを書き綴っていこうと思います。

また、逆に、人口の98%以上が日本人であるため、ニューヨークのような「多様性」が社会に見られない日本だからこそ持つ長所や強みなどについても取り上げていきます。

いずれにしても、日本の中にいると気づかなかったり、見過ごしがちなアイデ
アや視点を少しでもお届けできれば良いかなと思います。

りばてぃりばてぃ
ニューヨークの大学卒業後、現地で就職、独立。マーケティング会社ファウンダー。ニューヨーク在住。
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