1つのルールやシキタリじゃ縛れない!多様性で変わる働き方

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1つのルールやシキタリじゃ縛れない!多様性で変わる働き方

By: Mo Riza

第80回:社会の多様性で変わる働き方

(1)1つのルールやシキタリじゃ縛れない

今回の特集の中で、

「アメリカには適当な人が多い」

と指摘したが、それは文化や国民性というよりも『社会の多様性』を尊重することでもたらされているものだということを、ここで補足しておきたい。

別に、アメリカ人は怠け者というわけではないのだ。

それこそ日本人以上に真面目で勤勉なアメリカ人だっている。

じゃぁ、なんで一般的にアメリカ人は、日本の感覚からするとテキトーな人に見えてしまうのかというと、その原因は『社会の多様性』にあると言えるだろう。

移民の国、アメリカには多種多様の文化や価値観を持つ多様な人種や民族が暮らしている。

そうなると、1つのシキタリとか、1つのルールで人々をまとめることはほぼ不可能になってくる。

例えば、日本で新年度を迎えると、学校でも会社でも新人歓迎会的な「飲み会」がほぼ必ず開かれる。

もちろん飲むのはお酒。

日本では、お決まりの行事だ。

また、営業のお仕事でお得意先を接待する場合や、職場の仲間の親睦を高める場合などにおいても、日本では「飲み会」が開かれる。

一緒にお酒を飲みながら、地位や身分の上下を取り払い楽しむという意味の「無礼講」という言葉もある。

さらに「飲み会」と「コミュニケーション」の2つの言葉をかけて、「飲みニケーション」という言葉まであるくらいだ。

しかし、アメリカ人の中には、モルモン教徒やイスラム教徒の方々のように、宗教的な理由からお酒を飲まない(飲めない)方々も多い。

キリスト教には禁酒の戒律はないが、社会的な倫理の具現化の一つとしてお酒を禁じる宗派もある。

お酒ひとつでも、いろいろなスタンスがあるということをアメリカ人は分かっているので、、
「俺の酒が飲めないのか!!!」
みたいなシチュエーションはまず起こらない。

っていうか、そもそも会社の接待で得意先の人と夜に飲みに行く・・・ということすら、アメリカでは少ない。

その代わり、長めのお昼休みをとり、得意先の人とランチ・ミーティングしたりする。

その方が、お互いに勤務時間外のプライベートな時間を犠牲にしなくて済むというワケだ。

そうそう、日本の感覚で、夜の接待ディナーに誘い過ぎると喜ばれるどころか嫌がられることもあるので要注意だ。

そもそも働き方の概念が出身国の文化や価値観や、その人の信仰などで違っていたりもする。

お店のレジに長い行列ができているのに、お客とオシャベリしてレジを打つ手が止まっている店員さんもよく見かけるが、その店員さんの出身国では、レジが早いことよりもお客さんと会話して楽しませることが最良のサービスと考えられていたりするのかもしれない。

特に南米系の方々は、そういう傾向がある。

行列に並んで待っているお客さんがその会話に飛び入りし、ますます店員さんの手が止まるという場面に遭遇することもある。

彼らは、今、店員さんに話しかけたらレジが進まないから止めとこう、とは考えないのだ。

業務時間中でもお祈り休憩が必要になる方々もいる。

ユダヤ系の方々のように、そもそも一週間のうち働く曜日や祝日などが違う方々もいる。

髪や肌の色など外見だって様々だ。

日本だと、髪を染めることが禁止されていたり、別に禁止されているわけじゃなくても、金髪や赤など極端に目立つ色に染めていったら、上司や同僚から注意されそうな職場も多いと思う。

一方、アメリカではそんなの関係ない。

最初から、金髪のブロンド・ヘアーも別に普通だし、「赤毛のアン」のようなレッド・ヘアーの方もさほど珍しくはない。

そもそも髪の色を注意しようって発想がない。

なぜなら、髪の色の違いなんて、幼い子どもの頃からずっと見てきたものだし、髪の色の違いをどうのこうのと指摘するのは、下手すると人種差別的な発想だとみんなが理解しているからだ。

こんな感じで、なんでもかんでも多様なアメリカの社会では、例えば、新年度を迎えた職場に新人クンが入ってきた時でも、日本のように事細かな1つのシキタリやルールを押し付けることは殆ど不可能になってしまう。

もちろん、職務上の役割(いわゆるジョブ・ディスクリプションに書かれている業務内容)については、それに合意したから採用されているので、やってもらうことになるが、それ以外については、かなり自由度が高くなる。

もともといくつものシキタリやルールが共存する自由度の高い環境なので、新興のITベンチャー企業のオフィスなど、さらに自由度の高い職場では、自分のオフィス・スペースに、楽器やスケボーや巨大な観葉植物などを持ち込む方々も多い。

あるいは、そもそも企業側がオフィススペース内に滑り台やブランコほか遊べるものを設置してたりもする。
〔ご参考〕
●10 Cool Office Spaces

http://www.forbes.com/sites/jacquelynsmith/2013/03/08/10-cool-office-spaces/

もし日本でこうしたオフィスと同じように自由度の高い職場環境を用意しても、アメリカ人のように自分のワークスペースを自由に飾りつけする日本人は、それほどいないのではないだろうか?

 

(2)日本人ならではの特質

一方、日本では、総人口の98%以上が同じ文化や価値観を共有する日本人によって構成されている。

外国人在住者やハーフの方々も増えているとは言え、大多数が民族的にも同じ日本人だ。

また、文化や価値観といった内面だけでなく、当然、外見も同じ日本人の方々が大多数を占める。

こういう環境では、どうしたって、ついつい事細かな1つのシキタリやルールに縛られやすくなる。

別にシキタリやルールがなくても、日本では、世間体を気にしたり、空気を読んで行動することを、大多数の方々が当然のこととして受け入れている。

一億総中流。

出る杭は打たれてしまうのだ。

しかも、日本で生まれ育った日本人は、このような環境を幼い子どもの頃からずっと見てきたし、経験し続けてきたので、1つのシキタリやルールしかないことを当たり前だと思っている人が多い。

みんな心のどこかで、一応、1つのシキタリやルールにあわせながら、生きている。

そうした環境では、よほどのことでもない限り、例外はほとんど認められない。

また、そうしたシキタリやルールを守らない場合においても、そこにまた別の無形の1つのシキタリやルールを作って、みんなでそれにあわせるのが日本人らしいところだ。

例えば、学校の校則を守らずに、いわゆる不良と呼ばれる制服やファッションやメイクをする学生たちは、結局、まるでそこにシキタリやルールがあるかのように、みんな同じような格好をしてしまう。

同様に、ギャルにはギャル風ファッションやメイクがあって、一見、世間一般の子たちとは違う独自の個性を発揮しているように見えるけど、結局、みんな同じギャルのシキタリやルールに縛られていたりする。

自分の好きな趣味を追求しているオタクと呼ばれる方々にも、オタクならではのシキタリやルールみたいなものが自然発生的に生まれてきたりして、結局、そこに自分を当てはめているような気がする。

実際、鉄道オタクの方々の間には、彼らの間で用いられる様々なオタク用語が存在し、そうした用語を好んで使っているようだ。

例えば、鉄道に乗ることを趣味としている鉄道オタクは「乗り鉄」(のりてつ)と呼ばれる。

用例:

田中君は「乗り鉄」なんだってね?

鉄道写真を撮ることを趣味としている鉄道オタクは「撮り鉄」(とりてつ)。

用例:

ボクは「撮り鉄」なんだよ。

さらに『とりてつ』には、発車ベル、駅構内や車内の案内放送、その他の鉄道に関連する音を録音するのを趣味とする「録り鉄」や、鉄道のヘッドマーク、サボ、その他の鉄道に関する部品等を盗む「盗り鉄」などという悪い人までいるらしい。

どうやら日本で生まれた日本人は、どのような立場になっても、何かしらの1つのシキタリやルールに従いたがる真面目で勤勉な性質を持つ民族、と言えるのではないだろうか?

もちろん、全員が全員そうではないだろうけど、他の国々と比べると、比較的、そういう真面目な人が多いような印象がある。

これは、なんだかんだ言っても、同質社会で生きている日本人ならではの特質なのかもしれない。

そりゃぁ、それまでのシキタリやルールを変えてしまう変化がやってくることに、意識的にも無意識的にも、危機感や不安を感じる人(あるいは、そういうつもりじゃないのに、危機感や不安を煽る記事を書いちゃう人)が多いのも当然と言えば、当然か。

こうした日本人ならではの特質を踏まえたうえで、新年度を迎えてみると、これまでとは違った新しい挑戦にも挑みやすくなってくるかも?とか思ったりして。

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「多様性のもたらすもの」のコーナーでは、より良い日本の未来を築くうえで、役立ちそうな発想や情報を織り交ぜながら、ニューヨークの最大の魅力である「多様性」について感じたことや思っていることを書き綴っていこうと思います。

また、逆に、人口の98%以上が日本人であるため、ニューヨークのような「多様性」が社会に見られない日本だからこそ持つ長所や強みなどについても取り上げていきます。

いずれにしても、日本の中にいると気づかなかったり、見過ごしがちなアイデアや視点を少しでもお届けできれば良いかなと思います。

りばてぃりばてぃ
ニューヨークの大学卒業後、現地で就職、独立。マーケティング会社ファウンダー。ニューヨーク在住。
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