新たな宇宙競争のはじまり

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元アメリカ陸軍中尉の加藤喬氏が世界各国に派遣される米兵に現地語を教える独自のカリキュラムを用いて英語を解説!
また、軍隊を切り口に様々な国の背景も紹介します

人間には挑戦心があります。困難かつ崇高なゴールを与えられると燃え立つ本能と言っても良いでしょう。オリンピックしかりエベレスト登頂しかり宇宙開発競争しかり、達成が難しければ難しいほど、挑戦者たちは知力と体力の限界を押し上げようと競い合います。コンテストやレースは、それを意図的、組織的に鼓舞する仕掛けです。

1996年に立ち上げられたXプライズは民間最初の有人弾道飛行 (manned suborbital flight) を競うコンテストでした。3人を乗せ宇宙空間のはじまりとされる高度100キロに、2週間のうち2回到達することに成功した宇宙船開発チームに10億5000万円が与えられるという内容。

後年アンサリXプライズと呼ばれるようになったのは、テヘラン出身の若手起業家(young entrepreneur)アニューシャ・アンサリが運営資金の提供を申し出たことによります。ちなみに彼女は2006年、ロシアのソユーズ宇宙船に搭乗して国際宇宙ステーションに滞在、史上初の女性宇宙旅行者にもなりました。

前にも何回か触れましたが、このコンテストに優勝したのは、カリフォルニア州モハーベを拠点とするスケールド・コンポジッツ社のスペースシップ・ワンでした。設計者のバート・ルータン氏が「このコンテストに参加したことで、自分の創造性が今までになかったほど高められた」とビデオの後半で述べています。

航空機設計界の鬼才ルータン氏の挑戦心が、世界各国からのライバルとの競合でいっそう高められた結果です。

来年には民間宇宙旅行が現実のものになります。まだまだ高額で一般人には高嶺の花ですが、宇宙旅行に特化した宝くじ「スペース・ロッテリー」(space lottery) を立ち上げようという機運もあるようです。普段は宝くじに興味が無い読者でも、宇宙に行く夢のためになら買ってみようと思うのではないでしょうか。

【動画原文と訳】
カウンター00:44~
We are announcing today something called the X Prize, a 10 Million dollar contest for privately built spaceship that is capable to carry 3 individuals and to fly 100 kilometer altitude and do that twice inside 2 weeks.
(我々は今日ここにXプライズを公表します。3名を乗せ高度100キロに達する事のでき る宇宙船を2週間に2回打ち上げた民間チームに賞金1千万ドルが支払われます)

By defining the challenge with the Ansari X Prize, the X Prize foundation ignited a new race to space alluring teams from around the globe.
(アンサリXプライズとともに挑戦の条件を明確に示したXプライズ財団は、新たな宇宙競争に火をつけたのです。魅了された世界中のロケット開発チームが名を連ねています)

【基本語彙】
☆Capable of : 能力がある、出来る
☆Define : 定義する 規定する 明確に示す
☆Ignite : 点火する 燃え立たせる 刺激する
☆Allure : 魅惑する 惹きつける
【英語一言アドバイス】
define は 「定義する」「明確に示す」「定める」といった意味で使われます。例えば、
“Please define ‘もったいない’ in a more precise words”
(「もったいない」をもっと正確に定義してください)

“The Moon should be defined as a new objective for Japan’s space program”
(日本の宇宙開発計画で、月が新たな目標として定められるべきだ)
のように使えます。

無料メルマガ『もしも、の英会話入門[軍隊式英会話術]』より
http://www.mag2.com/m/0000229939.html
発行周期:週刊

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加藤 喬

米国防総省外国語学校日本語学部部長
1957年東京生まれ。79年に渡米アラスカ州立大学フェアバンクス校在学中、予備役士官訓練部隊を通じて少尉に任官。
湾岸戦争では整備中隊の中隊長代理として任務。