Xプライズの宇宙旅行

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元アメリカ陸軍中尉の加藤喬氏が世界各国に派遣される米兵に現地語を教える独自のカリキュラムを用いて英語を解説!
また、軍隊を切り口に様々な国の背景も紹介します

ライト兄弟 (the Wright brothers) がノースカロライナ州キティーホークの丘で史上初の動力飛行 (the first powered flight in history) に成功したのは1903年。しかし、飛行機はその後も数十年にわたり、好事家の危なっかしい玩具と見られ、なかなか日の目を見ませんでした。

これを一夜にして変えたのが弱冠25歳の郵便パイロットだったチャールズ・リンドバーグ (Charles Lindbergh)。ニューヨークからパリまで、単独で大西洋横断飛行に成功したのです。

当時、パリの空港には100万人近い観衆がつめかけたと言いますから、どれほどの快挙だったかがわかります。1927年のことでした。

米陸軍航空隊 (the Army Air Corps) のパイロットでもあったリンドバーグは、軍人に対する最高位の栄誉、議会名誉勲章 (Congressional Medal of Honor) を授与され国民的英雄となり、飛行機と飛行機旅行に対する熱狂的ブームを呼び起こしました。

これが航空関連業界株の急騰につながり、航空機製造と飛行機旅行が採算の取れるビジネスになったのです。
民間企業間の熾烈な自由競争 (open competition) によって、より大型で安全、かつ効率的な飛行機が続々と開発されました。これらの大型機を導入した航空会社が海外旅行ビジネスに参入するようになり、現在の航空関連業界の基礎が築かれたのです。
あまり知られていないことですが、リンドバーグの大西洋横断飛行はコンテストへの挑戦でした。ホテル業で財を成したレイモンド・オルティーグが、ニューヨーク・パリ間を無着陸で飛んだ者に2万5千ドル(現在の30万ドル以上に相当)の賞金を提供したのです。
このオルティーグ賞がなかったら、ゴールデン・ウィークや夏休みを利用して気軽に海外旅行に出かけることなど夢のまた夢だったかもしれません。

同じことが、今、宇宙旅行でも起ころうとしています。Xプライズです。

来年にも商業宇宙旅行を目指すスペースシップ2の原型は、このXプライズを獲得したバート・ルータン氏設計になるスペースシップ1。しかし次なるコンテストはもっと遠くを目指しています。月。もっと正確に言うと月に還るというゴールです。

Xプライズ財団とグーグルが協力し、無人探査機で月面探索に成功した民間グループに合計3000万ドルの賞金が与えられるというものです。

極寒の月の夜を乗り切ったり、アポロ計画で月面に残された機器を撮影したり、日の当たらないクレーターの影にあるとされる氷を発見したりした場合にはボーナス賞金も支払われることになっています。

このグーグル・ルナ・Xプライズは、将来的には月資源を活用して全人類の利益に貢献することを目指していますが、民間による安価で信頼性の高いロケット開発に弾みをつけ宇宙を身近にすることもゴールです。オルティーグ賞の宇宙版と言っても良いでしょう。

この想像力を燃え立たせるコンテストに、世界数十カ国の民間人グループが今日も挑戦しています。

今回のビデオは一流SF映画並の演技と構成が感動的です。読者もこの宇宙時代の革命に参加したくなるでしょうか。

【動画原文と訳】
カウンター01:00~
The X-Prize has joined forces with Google, the largest search engine to create the biggest international prize ever.
(Xプライズ財団は検索エンジン最大手グーグルと協力し、最大の国際コンテストを創りだしました)

And it is open to private enterprises in any nation.
(このコンテストには世界中の民間企業が参加出来ます)

30 million dollars in prize money is offered to the first two privately funded teams to land and rove the robotic crafts on the Lunar surface.
(ロボット探査機による月着陸を成功させ、月面を探査した最初の二つの民間チームに3000万ドルの賞金が与えられます)

【基本語彙】
☆Join forces : 協力する
☆Enterprise : 企業
☆Rove : さまよう 放浪する
☆Robotic : ロボットの
☆Luna : ギリシャ神話の月の女神
【英語一言アドバイス】
join forces は文字通り「力を合わせる」で、「協力する」「手を組む」の意味です。

Let us join forces on this project.
(この計画で手を組もう)

I want you to join forces with me.
(協力してほしい)

Japanese government and private sectors will join forces in nation-building efforts in Africa.
(日本の官民はアフリカ諸国の国造りに力を合わせていく)

無料メルマガ『もしも、の英会話入門[軍隊式英会話術]』より
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発行周期:週刊

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加藤 喬

米国防総省外国語学校日本語学部部長
1957年東京生まれ。79年に渡米アラスカ州立大学フェアバンクス校在学中、予備役士官訓練部隊を通じて少尉に任官。
湾岸戦争では整備中隊の中隊長代理として任務。