アメリカの宇宙開発

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元アメリカ陸軍中尉の加藤喬氏が世界各国に派遣される米兵に現地語を教える独自のカリキュラムを用いて英語を解説!
また、軍隊を切り口に様々な国の背景も紹介します

1961年5月21日、ケネディ大統領は60年代が終わるまでに人間を月に送り無事に帰還させるという野心的目標(ambitious goal)を議会で発表しました。

47歳の大統領が描いて見せた国家の夢に、アメリカは、その持てる人材、富、組織力のすべてを結集し、1969年7月20日、公約通りアポロ11号で月着陸を成功させたのです。

宇宙開発ファン(space enthusiasts)たちは、次は火星(Mars)だと勢い込みました。しかしあれから40年以上たった今も、ヒトは火星どころか月にも還っていません。当時のファンは、国家の夢が実は宇宙という第四の戦場で旧ソ連に先を越される恐怖の裏返しだったという重大な事実を見逃していたのです。

アメリカが月着陸によって宇宙で絶対的優位を固め、やがて旧ソ連そのものが衰えたことで、米国の宇宙開発は失速しました。後継機もないままスペースシャトル計画が終焉したため、民間会社(private firms)が打ち上げ事業に参入するようになりつつあります。

このこと自体は宇宙開発に自由競争(open competition)の仕組みを導入することになり、コスト軽減にもつながって良い傾向です。しかし、アポロ計画が米国全体を活性化し、国を超え、若き世代を科学、工学、天文学などの分野へと駆り立てたような夢と勢いに欠けています。

今回、ご紹介する「科学のシンフォニー」では、アメリカの航空宇宙エンジニア(aerospace engineer)、ロバート・ズブリン博士が、有人火星探査(manned exploration of Mars)を提唱しています。

アポロ計画のように単に行って帰ってくるのではなく、火星の資源を使って酸素、水、エネルギーを自給し、ヒトを恒常的に住まわせるという遠大なプロジェクトです。

人類の前向きな未来は、火星行きの夢を実現しようと多くの人たちが勇気を奮い立たせることで得られる。このような活性化なしには、人類の進歩は遠からず勢いを失い、やがては衰退するだろう。争いの絶えない地球のありようを思う時、ズブリン博士の主張には頷けるものがあります。

【動画原文と訳】
カウンター02:53~
(Dr. Robert Zubrin)
You have to believe in hope. You have to believe in the future.
(希望を信じることだ。未来を信じることだ)

There are more and more people coming around the point of view that a positive future for humanity requires human expansion to space.
(より多くの人たちが人類の前向きな未来は人が宇宙に進出することで得られると考えるようになっている)

(Dr. Sagan)
Mars is a world of wonders.
(火星は驚くべき世界です)

(Dr. Cox)
It has canyons, river valleys and giant ice sheets.
(火星には峡谷があり、川の流れた流域の跡があり、氷床があります)

(Dr. Sagan)
Mars is a world of wonders.
(火星は驚くべき世界です)

(Dr. Zubrin)
It shouldn’t be human to Mars in 50 years. It should be humans to Mars in 10.
(今後50年以内にヒトを火星に送るなんていうのじゃだめだ。10年で送らなくては)

(Dr. Sagan)
This is a world of wonders.
火星は驚くべき世界)

(Dr. Zubrin)
We are at a crossroads today. We either muster the courage to go or we risk the possibility of stagnation and decay.
(我々は岐路に立っている。勇気を奮い立たせて火星に行くか、停滞に陥り朽ち果てる 危険を冒すかだ)

【基本語彙】
☆Believe in: 存在や権威を信じる
☆Come around: 回り道してやってくる 同意するようになる
☆Point of view: 視点
☆Mars: 火星
☆Crossroads: 分岐点 岐路
☆Muster: かき集める 気持ちを奮い起こす
☆Risk: 危険を冒す
【英語一言アドバイス】
crossroads は文字どおり道(road)が交差(cross)する、つまり岐路という意味です。個人でも組織でも国でも、何らかの節目にあることを表現できます。

I am at a crossroad of life.
(人生の岐路に立っている)

Japan is standing at a crossroad whether to prosper with America or be dominated by growing China.
(日本はアメリカと共に栄えるか成長を続ける中国に牛耳られるかの岐路に立っている)

 

無料メルマガ『もしも、の英会話入門[軍隊式英会話術]』より
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加藤 喬

米国防総省外国語学校日本語学部部長
1957年東京生まれ。79年に渡米アラスカ州立大学フェアバンクス校在学中、予備役士官訓練部隊を通じて少尉に任官。
湾岸戦争では整備中隊の中隊長代理として任務。